世界の最先端を走るアメリカのeスポーツ産業
近年、日本でも関心の高まる“eスポーツ”。ビデオゲームを競技として捉えるeスポーツの存在は2010年頃には知る人ぞ知るものでしたが、近年はメディアへの露出も増えたことでその存在自体の認知は拡大。
2022年に共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する株式会社ロイヤリティ マーケティングが実施したeスポーツに関する調査では、10代~60代のうち7割がeスポーツを聞いたことがあると回答しています。
参考元:共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する株式会社ロイヤリティ マーケティングが実施した「10代から60代に聞いたeスポーツに関する調査」
また、国内におけるeスポーツ市場も年々規模を拡大しており、一般社団法人日本eスポーツ連合が発行する「日本eスポーツ白書2024」によれば、今後2025 年に向けて市場規模は200 億円に迫る勢いで拡大すると予測されています。
一般社団法人日本eスポーツ連合が発行する「日本eスポーツ白書2024」より
このように一般認知度、市場規模ともに大きな発展を見せる日本のeスポーツ市場ですが、eスポーツ産業の先を行く海外の市場はどのような発展をみせているのでしょうか?
本稿では北米、欧州、APAC、中東とさまざまな地域で発展を見せる世界各国のeスポーツ市場のなかでも、最先端を走るアメリカのeスポーツ市場についてご紹介します。
eスポーツ業界をけん引するアメリカの現状
eスポーツ発祥の国として知られ、長らくeスポーツ産業をけん引する立場にあったアメリカですが、2025年現在も世界トップクラスのeスポーツ大国の座にあります。
市場規模と成長率
アメリカを世界最大のeスポーツ大国たらしめる大きな要因がその莫大な市場規模です。
ドイツの調査会社Statistaの調査によればアメリカにおけるeスポーツ市場の収益は2018年頃から2022年頃までに4倍以上に増加しており、2023年の市場収益は2位の中国と2倍近くの差をつけ世界トップの8億7,100万米ドルを記録。
2024年から2029年にかけてはさらに50%近くの成長を見せ16億米ドル(1ドル150円で240億円相当)に達すると予測されています
市場収益に関する予測は香港の調査会社ASOWorldによるレポートでも、2028年までに15億米ドルに達すると予測されており、APACのeスポーツ市場をけん引する中国とともに世界のeスポーツ市場を発展させていくと考えられています。
参考:Statista「Revenue of the eSports market in selected countries worldwide in 2023」
参考:Statista「Revenue of the eSports industry in the United States from 2019 to 2029」
参考:ASOWorld「2024年の世界eスポーツ市場の展望」
アメリカ人のeスポーツへの関心度
近年、日本では認知度を拡大しつつあるeスポーツですが、アメリカにおけるeスポーツの関心度はどうでしょうか?
アメリカの18歳以上のユーザー2,202人を対象に実施されたStatistaによる2023年の調査では、調査対象の9%がeスポーツの熱心なファンであると回答し、17%がカジュアルなファンと回答しました。
単純に比較することはできないものの、eスポーツに関心があると回答したユーザーが10%に留まった株式会社ロイヤリティ マーケティングによる日本国内の調査※1を振り返れば、アメリカにおけるeスポーツの関心度は非常に高いものと捉えられるでしょう。
※1)2022年に国内在住の15歳~69歳の「Pontaリサーチ」会員1,200人を対象に実施された株式会社ロイヤリティ マーケティングによる調査では、全体の71%がeスポーツを認知していたものの、関心があると回答したのは10%だった。
参考元:共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する株式会社ロイヤリティ マーケティングが実施した「10代から60代に聞いたeスポーツに関する調査」
なお、Statistaは2029年までにアメリカにおけるeスポーツユーザー数は7,200万人に達し、普及度は20.67%に達すると予測しており、アメリカにおけるeスポーツへの関心度は少なくとも数年の間は高まり続けるものと考えられます。
eスポーツへの支援状況
アメリカではeスポーツへの支援もさまざまなかたちで行われており、その代表的なものの1つが大学におけるeスポーツプログラムの存在でしょう。
近年では日本でも学生のeスポーツプレイヤーを取り上げる動きが見られ、高等学校での部活動におけるeスポーツの採用や、高校生を対象とした全国大会なども開催されていますが、アメリカではさらに先を行く取り組みが報告されています。
日本よりもeスポーツへの関心度が高いアメリカでは、ハイスクールや大学においてeスポーツを正式な部活動として認可されるケースも多くあります。
特に大学におけるeスポーツ活動が活発であり、2014年にアメリカ初となる大学eスポーツチームがイリノイ州のロバートモリス大学で組織され、それからわずか4年で約50ものeスポーツチームが誕生。
NCAA(全米大学体育協会)によれば、現在までに学校から認可されたeスポーツチームを持つ大学は475校を超えているとのこと。
参考:Education Week「Gamers Are the New High School Athletes: The Rise of Esports」
参考:PwC「eスポーツビジネスにおける海外市場への挑戦」
アメリカの大学によるeスポーツへの注力は驚くべき規模で、カリフォルニア大学アーバイン校では2016年に『League of Legends』を開発・運営するRiot Gamesの後援を受けるかたちでeスポーツ奨励プログラムを開始。
同校では毎年10名の奨学生枠が用意されており、同校に在学・入学・転入する学生かつ、『League of Legends』の最高ランクに到達していることを条件に実技テストを通して選考が行われています。
参考:AUTOMATON「カリフォルニア大学アーバイン校がe-Sports奨学金を今秋より開始。公立校では初、『League of Legends』のRiot Gamesも後援」
NACE※2によれば、このようなeスポーツ奨学金を採用している大学は北米地域に300校以上存在しているといいます。
※2)National Association of Collegiate Esports。eスポーツ奨学金を採用する北米地域の大学によって組織された非営利大学会員組織。アメリカ、カナダの260校以上が参加している。(公式サイト)
アメリカのゲームコミュニティの形
日本国内ではX(旧Twitter)やDiscord上でゲーマーコミュニティが形成されていますが、アメリカではどのようなコミュニティが形成されているのでしょうか?
アメリカのゲーマーコミュニティはさまざまプラットフォームで展開されており、日本でもなじみ深いXやDiscordはもちろんのこと、FacebookやMeetup、Redditなどあらゆるツールを用いてコミュニケーションが取られています。
また、アメリカではコミュニティイベントも数多く開催されており、世界最大級のesportsイベントであるEVOこと「Evolution」はその筆頭です。
EVOは1995年から開催されている格闘ゲームコミュニティ発祥のゲームイベントであり、2024年に開催されたEVO2024には1万人以上が参加。『ストリートファイター 6』部門には5,000人以上がエントリーしました。
アメリカにおけるeスポーツの将来展望
近年APAC地域やサウジアラビアで勢いを増すeスポーツ産業ですが、アメリカでもeスポーツ産業の発展が続くのでしょうか?
Statistaの調査によればゲーム市場全体の成長はアメリカだけでも2024年から2029年の間に合計で599億米ドルの継続的な増加が見込まれており、ゲーム人口も同期間に合計2,780万人の増加が予測されています。
参考:Statista「Video game market revenue in the United States from 2019 to 2029」
参考:Statista「Number of video game users in the United States from 2019 to 2029」
この予測はゲーム市場全体のものですが、eスポーツ市場でもさらなる成長が見込まれています。
すでにご紹介したようにStatistaは、2029年までにアメリカのeスポーツユーザー数は7,200万人までに成長し、eスポーツ市場の普及率も合計5.3%の継続的な増加を見せ、20.67%に達すると予測しています。
この成長に伴うアメリカにおけるeスポーツ産業の収益は、2024年から2029年にかけて合計5億2,460万米ドル増加し、16億米ドルに達するとされています。
参考:Statista「Revenue of the eSports industry in the United States from 2019 to 2029」
また、近年では世界各国でゲームを取り扱うイベントやeスポーツイベントが開催されていますが、ラスベガスでは毎年世界最大級の格闘ゲームイベント「Evolution」が開催されており、国際大会の拠点としての役割に大きな変化はないものと考えられます。
eスポーツ市場の成長については中国を中心としたAPAC地域の大きな発展が見込まれていますが、上記の要素を踏まえるとアメリカでもeスポーツ産業の発展は続き、2030年頃まではeスポーツ主要国であり続けると思われます。
まとめ
日本でも近年関心の高まるeスポーツは世界各国で大きな成長を見せており、長らくeスポーツ先進国として市場をけん引してきたアメリカでもさらなる成長が見込まれています。
eスポーツ市場が急成長する中国やサウジアラビアとともにeスポーツ主要国であるアメリカのeスポーツ産業がどのような発展を見せるのか今後の動向に注目です。
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