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ゲームの公平性を破壊する違法行為「チート行為」とは?逮捕事例もあるオンラインゲーム最大のタブーを解説

2025.04.22

ゲームの公平性を破壊する違法行為「チート行為」とは?逮捕事例もあるオンラインゲーム最大のタブーを解説

オンラインゲームの終わらない課題チート問題。未成年でも刑事事件や損害賠償に発展も

1990年代に『Diablo』や『Ultima Online』といったオンラインゲームの始祖と呼ばれる名作たちが生まれてから四半世紀。

かつては知る人ぞ知る存在であったオンラインゲームは現在、PCだけでなくコンシューマゲーム機やスマートフォンでも気軽に楽しめるコンテンツに発展しました。

日本国内でも施設や駅の広告、ポップアップストアなど、SNSや動画サイトの外でもその姿を見る機会が増えています。

この四半世紀で目覚ましい発展を見せたオンラインゲームですが、この輝かしい歴史の影でオンラインゲーム業界が抱えてきた大きな問題が“チート行為”です。

オンラインゲームを楽しむユーザーなら誰もが一度はチート行為に関する話題を目にしたことがあるでしょう。

チート行為とは「ゲームのデータやプログラムを改ざんして、正規の利用では本来できないこと(ゲーム内通貨やレアアイテムを不正に増やしたり、キャラクターのレベルを急激に上げるなど)を不正にできるようにする行為※1」のことで、

※1)参考:警視庁「チート行為はやめましょう!」より

この数年では『PUBG: BATTLEGROUNDS』や『フォートナイト』、『Apex Legends』に『VALORANT』、『Call of Duty』シリーズといったFPS/TPSタイトルで注目を集めることの多い話題ですが、

格闘ゲームやMOBA、アクションゲームなどあらゆるゲームジャンルが共通で抱えるゲーム業界全体の問題です。

本稿ではオンラインゲーム業界が抱えるチート行為について、違法性や日本国内において警察が介入した事例、ゲーム会社からチート行為を行ったプレイヤーへのペナルティと一緒に解説します。

ゲームの公平性・競技性を破壊するチート行為

インターネットの普及とともに目覚ましい発展を遂げたオンラインゲーム業界の悩みの種であるチート行為ですが、なぜ「チートを使うな」と言われ続けているのでしょうか?

まずはオンラインゲームにおけるチート行為の問題点から確認してみましょう。

公平性・競技性の破壊

オンラインゲームで問題視されてきたチート行為とは、チートツールを使用してゲームのプログラムやデータを不正に改造・操作し、ゲームの開発会社が想定していない方法でツール使用者に有利な状況を作り出す行為です。

オンラインゲームではすべてのプレイヤーが開発会社が想定した同一条件のもとでプレイすることで、ゲームプレイの公平性や競技性が保たれています。

そのため少数のプレイヤーであってもチートが使用されると、その公平性や競技性のバランスが崩壊し、正しくゲームを楽しむプレイヤーのゲーム体験の質を著しく低下させます。

チート被害にあったプレイヤーの流出

前述のようにチート行為が蔓延すると、オンラインゲームの楽しみが破壊され、一般的なプレイヤーへ多大なストレスを与えます。

そのような状況が続けば、チート行為が蔓延するオンラインゲームのプレイ自体を忌避するプレイヤーが現れるのは容易に想像できるでしょう。

そうなれば本来想定されていたよりも早いペースでゲーム人口が減少し、新規プレイヤーの増加も望めなくなります。

運営・開発会社への負担

チート行為は一般的なプレイヤーだけでなく、オンラインゲームを運営・開発する会社にも悪影響を及ぼし、大きな負担となる存在です。

運営・開発会社はチート行為の対策といった本来であれば必要ない対応に迫られ、人的・金銭的コストを支払うことになります。

一方で、チート対策を進める間にも被害にあったプレイヤーたちは離脱していき、ゲーム人口の減少によって本来得られたはずの利益が失われます。

また、一度チート行為が蔓延したオンラインゲームやブランドについたマイナスイメージを拭うのは非常に難しく、新規プレイヤーの獲得にも特別な施策を投じる必要があるでしょう。

このように本来得られたはずの利益の損失や、必要のなかった追加コストはオンラインゲームのサービス終了に直結する問題となるため、運営会社は利用規約でチート行為を禁止し、チート販売業者や使用者を取り締まっているのです。

チート使用者へのペナルティ例

オンラインゲームのサービス品質に悪影響を与えるため、利用規約によって使用が禁止されているチート行為ですが、利用規約を無視して使用した場合にはどのようなペナルティが発生するのでしょうか?

チート行為が発覚したプレイヤーへの対処はオンラインゲームやその運営会社の方針によって多少の差はあるものの、チートが使用されたアカウントの利用停止措置やハードウェアBANと呼ばれるような利用ハードウェアの停止措置が取られます。

アカウントの利用停止措置

アカウントの利用停止措置とは、利用規約の違反が発覚したアカウントが利用できなくなるペナルティです。チート行為に限らず利用規約の違反があったと判断されるとその違反の程度によって段階的な処分が下されます。

テキストチャットやボイスチャットでのハラスメントや見方プレイヤーへの妨害行為といったチート行為以外での違反行為ではテキストによる警告や、数時間から7日、30日間、180日間といった段階的な利用停止措置が取られるケースもありますが、

チート行為のような重大な利用規約違反が発覚した場合には、段階的な利用停止措置を無視し、事前警告のない永久的な利用停止措置が取られることも珍しくありません。

また、アカウントの利用停止措置はチート行為が発覚したタイトルが遊べなくなるだけでなく、同一の運営会社が展開する別タイトルも一切プレイできなくなる場合もあります。

ハードウェアBAN(利用ハードウェアの停止措置)

ハードウェアBANはより有害性の高いプレイヤーに対して、アカウントの利用停止措置と同時に実施される重大なペナルティです。

チート行為が発覚したアカウントが利用できなくなるアカウントの利用停止措置と異なり、チートが使用されたパソコンなどのハードウェア自体をBAN対象とし、ゲームへのアクセスの一切を禁止します。

ハードウェアBANの詳細については一般的に明らかにされていないものの、パソコン内の構成部品やモニターの製造番号をBAN対象にするものとされており、ハードウェア自体がゲームへのアクセスを禁じられているため、アカウントを作り直してゲームを遊ぶことも不可能となります。

なお、ハードウェアBANは停止措置の見直しにより解除されるケースも確認されているものの、利用停止となったアカウントが戻ることはありません。

eスポーツタイトルでは大会出場停止処分も

ゲームの公平性や競技性を破壊するチート行為は、eスポーツタイトルにおいて特別大きな問題として捉えられています。

そのため、FPS/TPSジャンルや格闘ゲームといった競技性の高いタイトルでは、チート行為が発覚したことでeスポーツ選手としての活動が不可能となる重い処分が下されることがあります。

例えばFPSジャンルの老舗タイトルとして世界中で親しまれている『Counter-Strike 2(旧Counter-Strike: Global Offensive )』では、オフライン大会で不正ツールを使用したとしてESIC※2より加盟団体が開催する大会への5年間の出場停止処分が下されています。

※2)「ESL」や「DreamHack」といったeスポーツ大会大手が加盟するeスポーツの誠実性・健全性を守るための組織。正式名称は「Esports Integrity Coalition」。

参考:Negitaku.org esports「CS:GOオフライン大会で不正ツール使用発覚のforsaken選手、5年間の大会出場禁止処分に

また、日本国内でも高い注目を集めるFPSタイトル『VALORANT』では、2023年の公式大会出場選手によるチート行為が発覚したとして、同選手への公式大会無期限出場停止処分が下されました。

参考:『VALORANT』微博公式アカウントによる発表

チート行為による大会出場停止処分は、過去のチート行為の発覚により下されるケースもあるため、1度のチート行為がeスポーツ選手としての将来や、ゲームコミュニティでの信用を失うことにつながります。

チート行為は日本でも違法。使用者に損害賠償の実例も

これまでチート行為によるペナルティとしてゲームを楽しんだアカウントやeスポーツ選手としての将来の損失といったゲームをプレイするうえでの問題を取り上げてきましたが、

日本国内におけるチート行為は警視庁からのチート行為の注意喚起「チート行為はやめましょう!」でも触れられている通り、違法行為として処罰される可能性やオンラインゲームの運営・開発会社からの損害賠償請求といった大きな問題に発展する可能性もあります。

違法行為としての処罰の可能性

チート行為が逮捕につながったという海外のニュースを見かけることがありますが、日本国内においてもチート行為は違法行為です。

チート行為は一般的に著作権の侵害や電子計算機損壊等業務妨害罪にあたるとされ、日本国内でもチートツールの開発者やその利用者が逮捕、書類送検された事例があります。

例えば2016年には、Nianticと株式会社ポケモンによって共同開発された『Pokémon GO』では、チートツールを作成した広島市の大学3年生が著作権法違反の疑いとして逮捕され、チートツールを使用した男性4名が偽計業務妨害の疑いで書類送検されています。

参考:マイ法務「「ポケモンGO」で“ずるいこと”すると逮捕される!

また、2020年にはNetEase Gamesが運営・開発する『荒野行動』でもチート行為を行ったプレイヤーが逮捕された事例が報告されており、NetEase Games『荒野行動』日本運営プランナー「ちょうなん@荒野行動開発者」氏によって警察に提出された告訴状が公開されています。

20歳未満でも少年事件として家裁送致、損害賠償の可能性

チート行為による逮捕や損害賠償は大人の問題と捉えている方もいるかもしれませんが、20歳未満でも少年事件として罪に問われる可能性や、損害賠償を請求される可能性があります。

2021年にはそらいろ株式会社が配信するスマートフォン・タブレット向けアプリ『人狼 ジャッジメント』においてチート行為を繰り返したとして、当時18歳だった少年が電子計算機損壊等業務妨害の罪で家裁送致されました。

当該事例では逮捕には至らなかったものの、家庭裁判所調査官による教育的措置の上で厳重注意処分に。

運営会社からは損害賠償も請求されており、運営会社への謝罪と100万円を大きく超える額の和解金の支払いによって和解したといいます。

参考:時事ドットコム「若年化する「チート」、犯罪意識薄く◆「こんなことで事件に」憤る親も #ネットの落とし穴

まとめ

チート行為は他のプレイヤーを出し抜くずるい行動ではありません。プレイヤー間に生じる軽度の問題ではなく、オンラインゲームの運営会社を巻きこみ、オンラインゲーム自体をサービス停止に追い込む犯罪行為です。

近年ではチートツールの使用者が違法行為として処罰されるケースや、運営会社から損害賠償を請求されるケースも増加しており、誤った選択が人生を左右する大きな問題に発展します。

オンラインゲームで遊ぶ際はチート行為に手を染めないだけでなく、チートツールを使用するプレイヤーを見かけたらゲーム内の通報機能などを用いて運営に報告し、オンラインゲームを長く楽しみましょう。



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