デジタル化の進む現代では、投資家との関係構築にもオンラインプラットフォームの活用が求められています。従来オフラインで行われていたカンファレンスやセミナーは、新型コロナウィルスの感染拡大や、それに伴う通信インフラの整備によりオンラインでの開催が主流となりました。
IR・SR分野においては投資家、株主の意見に柔軟に耳を傾ける必要があり、オンラインでの手軽さは魅力ではありますが、オフライン開催によるメリットも見逃せません。オンラインでのアプローチが広範な投資家層へのアクセスを実現する一方で、直接コミュニケーションを取ることで実現する熱量の高さ、インパクトの残しやすさは対面ならではの利点です。
そこで、注目されているのが対面形式の会場イベントとオンライン配信を組み合わせた「ハイブリッドセミナー」です。
本稿では、ハイブリッドカンファレンスによる、オンライン・オフライン両面のメリットを活かした強固な投資家・株主へのエンゲージメントの形成について紹介し、開催に向けた費用感などもまとめていきます。
目次
対面とウェビナーを併催する「ハイブリッドセミナー」のメリット
ウェビナーとは?
ウェビナーとは、「ウェブ(Web)」と「セミナー(Seminar)」を組み合わせた造語で、インターネットを通じてリアルタイムに実施されるセミナー形式のオンラインイベントを指します。
ウェビナーのメリットには、フィードバック収集やアーカイブの配信など比較的容易な点が挙げられます。
また、IR・SR分野へのターゲットの人物像をイメージした際に、場所や時間の制約を超えて情報収集を行う多忙な機関投資家、最新情報を効率的に把握したい個人投資家、そして海外から日本の企業に投資を行うグローバルな投資家に特に適しています。彼らはPCやスマートフォンを通じて、自宅やオフィスから気軽にIR・SR情報にアクセスすることを望んでいます。
ウェビナーのテクニック
日々目まぐるしい変化が起こる経済情勢において、投資家・株主の意見や要望を効果的にIR活動に取り入れるためには、リアルタイムでのデータ収集と分析が重要です。例えば、オンラインアンケートやライブチャット機能を活用することで、即時のフィードバックを得ることができます。このエンゲージメントの高さにより、迅速な意思決定や戦略の見直しを行うことができるようになります。
ウェビナーならではのツールやシステムとしては下記のようなものがあります。
• ライブQ&Aセッション:リアルタイムでの質疑応答を通じて、投資家の疑問や関心に即座に対応。
• 投票システム:参加者からの意見を効率的に収集し、セミナー内で共有。
• オンラインフォーラム:イベント後も継続的に投資家と対話を行うためのプラットフォーム活用。
等、迅速なフィードバックに適応したツールを活用できます。
ハイブリッドセミナーのメリット・デメリット
ハイブリッドセミナーは対面とウェビナーの両方の形式を組み合わせることで、IR・SR活動において多様な投資家層にアピールするための有効な手段となります。
株主・投資家とのコミュニケーションは、企業価値向上に不可欠です。それぞれのコミュニケーション手法にはメリット・デメリットがあり、目的に応じた使い分けが重要です。
オンライン:広範なリーチと効率性
メリット
- 場所の制約なし:国内外の株主・投資家に広く情報を届けられる。
- コスト削減:移動・会場費などが不要になり、効率的な運用が可能。
- 迅速な情報共有:決算発表など緊急性の高い情報も素早く発信でき、アーカイブも可能。
デメリット
- 交流の限定性:非言語的なニュアンスが伝わりにくく、深い関係構築が難しい。
- 集中力の維持:参加者の環境によって集中力が途切れる可能性がある。
オフライン:ディープな交流と臨場感
メリット
- 対面での信頼構築:経営陣の熱意や企業文化を直接伝え、深い信頼関係を築ける。
- 五感で得る体験:工場見学などを通じて、事業への理解と共感を深められる。
- コミュニケーションの強化:参加者同士や企業担当者との間で、より密な情報交換や意見交換が生まる。
デメリット
- 地理的・時間的制約:遠隔地の株主・投資家は参加しにくい。
- 参加者の負担:移動や宿泊にかかるコスト・時間の発生。
- 情報の一過性:その場限りの情報になりやすく、後追いが難しい。
ハイブリッド:オンライン・オフラインの利点を最大化
オンラインとオフラインのメリットを組み合わせるハイブリッド形式は、IR/SR活動において最適な選択肢となりえます。
- オンラインの弱点を補完:オフラインの場を設けることで、深い交流、臨場感ある体験、高い集中力を実現し、経営陣の想いを直接伝えることができる。
- オフライン・オンラインの弱点を補完:オンライン配信を併用することで、地理・時間の制約を解消し、広範囲の株主・投資家にリーチ。コンテンツのアーカイブも可能にし、情報の一過性を解消する。
- 新たな価値の創出:より多くの株主・投資家にアプローチしつつ、重要なステークホルダーには質の高い対面交流を提供でき、企業の透明性と公平な情報開示を促進し、企業価値向上に繋げられる。
このようにハイブリッド形式の特長は、参加者の環境やニーズに応じて、柔軟かつ最適な体験を提供できる点にあります。
会場に足を運べる参加者とは、現地の担当者が直接対話する実地ならではの機会を用意し、遠隔地の投資家に対してはライブ配信やアーカイブを通じて情報にアクセスできる環境を整える。そうすることで、参加のハードルを下げつつも、従来の対面方式が持つ熱量の高さや交流の魅力を残し、強固な関係性を形成することができます。
また、内容が映像として残ることで、動画コンテンツとして社内外のマーケティング活動に有効活用できる副次的なメリットも存在します。昨今のSNSにおけるシェア戦略にも有効となるでしょう。
これら両面のメリットを良いとこどりすることによって、イベントの情報発信力と波及効果を最大化することが可能になります。
ハイブリッドセミナーの成功には専門知識が不可欠
ハイブリッドセミナーは、オンラインとオフラインそれぞれの準備が必要なため、単独開催に比べて準備工数が大きく増えるのは事実です。オンライン配信のためのプラットフォーム選定、機材テスト、高品質なネット環境の確保、そしてオフライン会場の手配や参加者誘導に加え、両者をスムーズに連携させるための高度な技術と経験が求められます。
「リソースが足りるか不安」「技術的なトラブルが心配」と感じる方もいるかもしれません。しかし、これら複雑な準備や運営を自社ですべて行う必要はありません。
プロに任せるという選択肢
ハイブリッドセミナーの成功には、専門的な知識と豊富な経験が不可欠です。社内のリソースを圧迫したり、不慣れな準備で当日トラブルが発生したりするリスクを避けるためにも、専門の業者に依頼するという選択肢は非常に有効です。
プロのサポートを受けることで、以下のようなメリットがあります。
- 準備工数の大幅削減:オンライン・オフライン双方の複雑な準備を任せられます。
- 技術的な安心感:安定した配信環境の構築からトラブルシューティングまで、専門家が対応します。
- 高品質な体験提供:参加者にとって満足度の高い、シームレスなイベント運営が実現します。
- 本業への集中:IR/SR担当者は、イベント運営の心配なく、株主・投資家とのコミュニケーションに集中できます。
ハイブリッドセミナーの実施は、貴社のIR/SR活動を次のレベルに引き上げる強力な手段です。その実現のために、ぜひ専門家の力を借りることを検討しても良いのではないでしょうか。
ハイブリッドのIR・SRの広報活動事例
ハイブリッドIR/SRイベントの広報活動事例
ハイブリッド形式は、より多くの株主・投資家と深くエンゲージメントするために多くの企業が活用しています。ここでは、具体的なイベントタイプと、それがどのようにハイブリッドであるかをご紹介します。
1. 決算説明会・事業説明会
多くの企業が、決算発表後に実施する説明会でハイブリッド形式を採用しています。
- 事例の傾向: 多くの上場企業が決算発表後、機関投資家やアナリスト向けに会場で説明会を開催しつつ、その模様をライブ配信しています。例えば、TKPの導入事例などでは、リアル会場でのプレゼンテーションと質疑応答に加え、ウェブ上でのライブ配信とアーカイブ公開を組み合わせ、遠隔地の投資家や個人投資家も効率的に情報を得られるようにしています。オンラインからの質問をチャットで受け付け、ライブで回答することで、公平な情報開示を実現しています。
- ハイブリッドである点: リアルな場で経営陣と直接質疑応答ができる機会を提供しつつ、オンラインを通じて広範囲の投資家が参加できるようにする点です。
2. 株主総会
株主総会は、株主との重要なコミュニケーションの場であり、近年ハイブリッド化が加速しています。
- 事例の傾向: 経済産業省の推進もあり、多くの企業がハイブリッド型バーチャル株主総会を実施しています。例えば、GMOインターネットは、早い段階からハイブリッド型バーチャル株主総会を実施し、総会時間の短縮と株主の参加機会拡大を実現しました。また、日本郵政などもコロナ禍において、会場座席数を減らしつつリアルタイム動画配信を行うことで、株主の安全確保と情報提供を両立しました。多くの企業がSharelyやブイキューブといったサービスを活用し、オンラインでの議決権行使や質問受付を可能にしています。
- ハイブリッドである点: 従来の会場開催に加え、オンラインでの視聴や一部企業では議決権行使・質問も可能にすることで、幅広い株主が参加しやすくなっています。
3. 施設見学・工場見学付きIRイベント
事業内容への理解を深めてもらうための施設見学も、ハイブリッドで行われることがあります。
- 事例の傾向: 製造業や研究開発型企業などでは、実際の現場を投資家に見てもらうことが事業理解に繋がるため、施設見学をIRイベントに組み込むことがあります。例えば、特定の技術や製品のデモンストレーションを会場で行い、その様子をオンラインで中継する形式です。これにより、物理的に来場できない投資家にも、現場の雰囲気や具体的な事業内容を視覚的に伝えることが可能になります。具体的な企業名はIRイベントとして大々的に公開されることは少ないですが、個別の投資家ミーティングや小規模なグループ向けにハイブリッド形式で実施されるケースが見られます。
- ハイブリッドである点: 実際に体験できるオフラインの価値を維持しつつ、オンライン配信によって地理的な制約を取り払い、より多くの投資家へ「現場の空気感」を届けることを目指す点です。
これらの事例は、ハイブリッド形式が、企業の透明性を高め、より多くの株主・投資家との関係を強化するための有効な手段であることを示しています。貴社のIR/SR戦略に合わせて、これらの事例を参考にハイブリッドイベントの企画を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
オンライン・オフライン共に、投資家の方々を満足させるイベントを成功させるためには、ある程度の予算規模が必要になります。そのため、どちらか一方を開催するよりは、例えば対面イベントのコンテンツと並行してオンライン配信の準備を進めた方が、動画コンテンツなどに流用できる可能性があり、結果的に費用を抑えることが可能となります。
投資家が企業価値を判断する重要な機会だからこそ、直接的なコミュニケーションによる密な関係づくりと、ツール活用によるフィードバックを得やすさを両立したイベントを企画してみませんか。
JCGではハイブリット開催に伴う、煩雑化した業務フローをご支援しています。困った際にはぜひご一考ください。