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「eスポーツの聖地」と呼ばれる韓国
ここ数年、日本でも「eスポーツ」という言葉を耳にする機会が増えています。世界大会など大規模イベントも開催され、プロ選手たちの活躍がニュースで取り上げられるなど、その注目度は年々高まっています。
しかし、お隣の国、韓国に目を向けると、その熱狂と文化としての発展は私たちの想像を遥かに超えるレベルに達しており、韓国は世界が認める「eスポーツ先進国」、そして「eスポーツの聖地」となっています。
この背景には世界最速レベルのインターネットインフラ、友人と集い腕を磨く「PCバン」という独特の文化、そして国を挙げたeスポーツの振興と、幼い子どもたちの憧れの的となるスタープレイヤーなど、文化的、社会的な要素が深く関わっています。
本稿では、なぜ韓国でeスポーツが国民的な人気を誇るのか、その理由を解き明かすとともに、世界を舞台に活躍する伝説的なプレイヤーや韓国のプレイヤーを熱中させているPC・モバイルの人気eスポーツタイトルをご紹介します。
韓国でeスポーツが国民的文化となった3つの理由
韓国のeスポーツに対する熱狂は、一朝一夕に生まれたものではなく、国家戦略として整備された世界最高水準のインターネット網や、そこから発展した独自の文化。
政府主導による産業化とメディアが作り上げた「観るスポーツ」としての地位と、他のプロスポーツを凌ぐほどの存在感を放つスタープレイヤーの誕生があります。
本項ではこれらの要素がどのように韓国を世界一のeスポーツ大国へと押し上げたのか、その理由を3つの側面に分けて詳しく紐解いていきます。
世界最速レベルのインフラと「PC방(バン)」文化
韓国におけるeスポーツ業界の発展を語る上で欠かせないものが、世界最高水準のインターネットインフラです。
1997年のアジア通貨危機による経済的な打撃からの再建策のひとつとして、韓国政府はIT産業の育成、インターネットインフラの整備に莫大な投資を行っています。
参考:韓国が「政府のIT化」で世界3位に…14位の日本に「大きく差をつけることができた」ワケ(現代ビジネス)
この政府主導のIT戦略により、韓国は世界でも類を見ないスピードでブロードバンド網が普及し、2004年頃にはインターネットの利用者数が国内人口の半数以上に達しています。
参考:情報社会実現に向けた韓国政府の取り組み(NTT技術ジャーナル)
安価かつ高速なインターネット環境が広く整備された韓国では、その特有のインフラを土台として韓国独自の「PC방(バン)」というインターネット施設が広まります。
PCバンは、PCが数十台から数百台並ぶインターネットカフェの一種で、日本のインターネットカフェと異なりPCがずらりと並んでいるのが一般的です。
一般的に1時間で1,200〜2,000ウォン(日本円で130〜220円)ほどで利用でき、高価なゲーミングPCが配置されていることも珍しくありません。
このような家に高性能なPCがない若者でも気軽に最新のゲームに触れられる環境があることで、韓国ではゲームとの距離感が近く、ゲームを競技として向き合うeスポーツのコミュニティ形成と競技人口の増加にも繋がったと考えられます。
政府が主導するeスポーツの産業化とメディア露出
韓国では、政府がeスポーツを正式なスポーツ産業として捉え、積極的に支援してきた歴史があります。
2000年には、文化体育観光部の認可を受け、世界に先駆けて「韓国eスポーツ協会(KeSPA)」が設立されました。
KeSPAは韓国オリンピック委員会と国際eスポーツ連盟(IeSF)に加盟しており、プロゲーマーの育成や登録のほか、プロチームの監督、大会の開催などeスポーツに広く関わっています。
このほかにも韓国政府はeスポーツの推進に積極的に取り組んでおり、eスポーツに関連する法律の整備、イベントの開催など、国民がeスポーツやゲームと触れ合うことを推奨しています。
参考:韓国のeスポーツ団体“KeSPA”のキーマンにインタビュー。eスポーツ隆盛の背景にあるのは、行政との連携【闘会議2018】(ファミ通.com)
また、韓国におけるeスポーツの発展にはメディアの役割も大きく関わっており、2000年代初頭には「OGN(Ongamenet)」のようなeスポーツ専門のテレビチャンネルが開局しています。
このようなeスポーツチャンネルでは『StarCraft』や『League of Legends』などの大会の様子が放送されており、韓国では早い段階から「観るスポーツ」としてもeスポーツが定着したものと考えられます。
スタープレイヤーの存在と社会的認知
前述したように、政府主導でインターネットインフラの整備が進み、早い段階からeスポーツの発展が進んだ韓国では、現在までに数多くのスタープレイヤーが誕生しました。
彼らは単なるゲームの上手い人ではなく、高額な年俸を稼ぎ、ひとつの職業として社会的に高い地位を確立しています。
その経済的なインパクトは、韓国の国民的スポーツであるプロ野球やプロサッカーをも上回るほどで、韓国プロ野球(KBOリーグ)の最高年俸は2024年シーズンで約2億5千万円、韓国プロサッカー(Kリーグ)の韓国人選手の最高年俸は約1億5000万円と報じられています。
参考:プロ野球選手の気になる年俸事情、韓国の場合は?2024年平均額1549万円、最高額は2億5千万円(スポーツソウル)
参考:Kリーグ、2023年シーズン1・2部全チームの年俸状況を発表。総額最多は全北で198億ウォン、韓国人選手TOPはキム・ヨングォンで15億3千万ウォン(Kリーグ公式)
これに対し、『League of Legends』界の生きる伝説と呼ばれるFaker選手の年俸は5億円から7億円と推定されています。
参考:260억 中러브콜도 퇴짜…’롤의 메시’ 페이커, 한국 남은 이유(中央日報)
Faker選手のようなスタープレイヤーの存在は、eスポーツ産業全体のイメージを向上させ、才能ある若者が韓国を目指すという好循環を生み出したと考えられます。
世界を舞台に活躍する韓国のレジェンド選手たち
確立された育成システムと熾烈な国内競争の中から、韓国はこれまで数え切れないほどのスタープレイヤーを世界の舞台へ送り出してきました。
その活躍は特定のタイトルに留まらず、国民的ゲームの『League of Legends』はもちろん、バトルロイヤルゲームの『PUBG: BATTLEGROUNDS』、タクティカルシューターの『VALORANT』、チーム対戦型シューター『Overwatch 2』など、主要なeスポーツタイトルの多くで韓国人選手が活躍しています。
今回は、そんな数多のスター選手の中でも、特にeスポーツの歴史を築き上げ、後進に大きな影響を与え続ける2人の「生ける伝説」をご紹介します。
Faker:『League of Legends』界の最強プレイヤー
『League of Legends』において、史上最高のプレイヤーと称されるのがFaker(フェイカー)選手です。
“The Unkillable Demon King”(不死身の魔王)の異名を持ち、その驚異のプレイでチームを幾度となく勝利に導いてきました。
彼が所属する「T1」は、eスポーツにおける最高峰のひとつである「League of Legends World Championship」で前人未到の4度の優勝を達成しています。
Faker選手の名は『League of Legends』プレイヤーだけでなく、他タイトルのプレイヤーやeスポーツに詳しくない人にまで知られており、単なる一人の選手だけでなくeスポーツという文化そのもののアイコンにもなりつつあります。
Flash:『StarCraft』が生んだ最終兵器
韓国eスポーツの黎明期を語る上で絶対に欠かせないタイトルが、リアルタイムストラテジーゲームの金字塔『StarCraft』です。
そして、『StarCraft』の歴史上、偉大な選手のひとりとして崇められているのがFlash(フラッシュ)選手です。
“The Ultimate Weapon”(最終兵器)というニックネームで呼ばれた彼は、10代でプロシーンに登場して以来、圧倒的な実力と戦略でライバルたちを蹂躙し、主要トーナメントで数多くの優勝を飾りました。
韓国で人気のeスポーツタイトル10選
韓国のeスポーツシーンは多岐にわたりますが、その本流であり、最も熱い戦いが繰り広げられているのがPCゲームの世界です。
ここでは、2025年現在の韓国eスポーツシーンを象徴するPCタイトルを10本厳選してご紹介します。
Eternal Return
主な大会:Eternal Return Masters / 韓国ナショナルリーグ
韓国産のMOBAとバトルロイヤルを融合させた本作ではシーズンごとに「Eternal Return Masters」という公式大会が開催されています。
FIFA Online 4
主な大会:eK League Championship
PCバンで絶大な人気を誇るサッカーゲームです。Kリーグと連動したプロチームも参加する「eK League」が開催されています。
KartRider: Drift
主な大会:KDL (KartRider: Drift League)
国民的レースゲームとして親しまれてきた「カートライダー」シリーズでは個人戦とチーム戦の2部門でリーグが開催されています。
League of Legends
主な大会:LCK (League of Legends Champions Korea)
韓国eスポーツの象徴とも言える最高峰のプロリーグです。 10のフランチャイズチームが春(Spring)と夏(Summer)の2シーズン制で年間チャンピオンの座を争います。
国内での人気・実力ともに圧倒的で、世界大会(Worlds)ではLCK代表チームが何度も優勝を果たしています。
Overwatch 2
主な大会:Overwatch Contenders Korea / WDG Overwatch The OPEN
WDG(Wepg.net Esports)などが主催するオープン大会が開催され、プロを目指す多くのチームが参加しています。
かつては公式下部リーグ「Contenders」も開催されていました。
PUBG: BATTLEGROUNDS
主な大会:PWS (PUBG Weekly Series: KOREA)
韓国のデベロッパーKRAFTONが生んだ、バトルロイヤルゲームの金字塔は現在も高い人気を誇り、国内プロリーグ「PWS」は年間を通して複数のフェーズに分かれて開催されています。
StarCraft II
主な大会:GSL (Global StarCraft II League)
「eスポーツの原点」とも称されるリアルタイムストラテジーゲーム『StarCraft II』では個人戦の最高峰リーグである「GSL」が2010年から開催されています。
StarCraft: Remastered
主な大会:ASL (AfreecaTV StarCraft League)
『StarCraft』は発売から20年以上経った今なお、韓国で熱狂的な人気を誇る伝説的タイトルであり、SOOP(旧:AfreecaTV)「ASL」では現在リマスター版の『StarCraft: Remastered』が採用されています。
Tekken シリーズ
主な大会:AfreecaTV Tekken League / SOOP Tekken League
日本発の3D対戦格闘ゲームですが、韓国は世界有数の強豪国として知られており、SOOP(旧:AfreecaTV)が主催する「STL)」 では、世界トップレベルの選手たちがハイレベルな個人戦を繰り広げています。
VALORANT
主な大会:VALORANT Challengers Korea
若者を中心に人気が急上昇しているタクティカルシューターは韓国でも高い人気を誇り、日本同様に国内リーグ「Challengers Korea」では、上位リーグである「VCT Pacific」への昇格を目指すプロチームが激しい戦いを繰り広げています。
韓国で人気のモバイルeスポーツタイトル5選
PCゲームの聖地、韓国ではスマートフォン向けのタイトルも巨大なeスポーツ市場を形成し、プロリーグなども開催されています。
本項では韓国モバイルeスポーツシーンを牽引する5つのタイトルをご紹介します。
Brawl Stars
主な大会:Brawl Stars World Finals – East Asia Qualifier
毎年開催される世界大会「Brawl Stars World Finals」への出場権をかけた東アジア予選が韓国のチームを対象に行われており、トップレベルのチームを輩出しています。
PUBGモバイル
主な大会:PMPS (PUBG Mobile Pro Series)
『PUBGモバイル』は韓国モバイルeスポーツシーンを代表するタイトルの一つであり、韓国では公式プロリーグ「PMPS」が年間を通して開催されており、国内トップチームが世界大会への出場権をかけて激しく競い合っています。
三国志戦略版 (Three Kingdoms Tactics)
主な大会:最強同盟招待杯
2021年には優勝賞金5,000万ウォン(約530万円)という高額賞金を懸けた大規模な同盟対抗戦が開催され、大きな話題となりました。
League of Legends: Wild Rift
主な大会:WCK (Wild Rift Champions Korea)
2022年にはプロリーグ「WCK」が開催され、KT Rolsterなどのプロチームが参戦しました。
なお、2023年以降、Riot Gamesの方針変更によりWCKはアジア太平洋地域のリーグ「WCS Asia-Pacific」に統合されています。
Summoners War: Sky Arena
主な大会:Summoners War World Arena Championship (SWC) – Korea Preliminary
韓国のCom2uSが開発し、世界的にヒットしたターン制RPGです。毎年、世界一を決める大会「SWC」が開催されており、その予選は韓国を含む世界各地域で行われます。
CookieRun: Bravers
主な大会:CookieRun: Bravers 1st Official Cup
2024年に初の公式eスポーツ大会が開催され、新しいモバイルeスポーツタイトルとして注目を集めています。
まとめ
本稿で紹介したように、韓国のeスポーツは盤石なインフラや独自の文化、そしてスター選手の存在が見事に融合し、世界の最先端を走り続けており、その熱量と経済規模は今や伝統的なプロスポーツを凌ぐほどです。
これからeスポーツがさらに発展していく日本の少し先の未来像かもしれないeスポーツの聖地、韓国が持つ本場の熱狂に目を向けてみてはいかがでしょうか。
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