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ビジネス活用が進むオンライン配信
ビジネスイベントの開催において、集客範囲の拡大や費用対効果の最大化が常に重要なテーマとなります。こうした現代のビジネス課題を解決する強力な一手として、「オンライン配信」の活用が不可欠な時代となりました。
その活用法も単なる一方的な情報発信にとどまらず、参加者の「体験価値」をいかに高めるか、という新たなステージへと移行しています。近年ではAR/VRといった最新技術を用いて、これまでにない「体験」を創出する先進的な試みも始まっています。
本記事では、オンラインイベント開催における基本的な課題解決策から、ビジネスイベントの未来を形作る国内外の成功事例や最先端トレンドまでご紹介します。
ビジネスイベント配信のメリットと活用法
現代のデジタルマーケティング戦略において、リアル(対面)とオンラインを組み合わせたハイブリッドイベントの活用は不可欠な戦略として注目されています。
イベントをオンライン配信することには、地理的な制約を超えた広範なリーチの拡大、コスト削減、そして参加者データの詳細な収集・分析が可能となり、高い費用対効果が期待できます。
配信形式にはリアルタイムで臨場感を伝えるライブ配信、高品質で利便性の高いオンデマンド配信(録画配信)、そして両者の利点を融合させたハイブリッドイベントがあり、イベントの目的やターゲット層に応じて最適な形式を選択することが重要です。
配信で得られる効果
イベントをオンラインで配信することは、主催者側に従来のリアルイベント単独開催では得られなかった、高い効果をもたらします。この効果は、集客、コスト効率、データ活用といった多岐にわたる側面で現れます。
オンライン配信を活用したイベントでは、地理的な制約を受けずに国内外の幅広い層に見込み顧客や関係者に情報を届けることを可能にし、情報の到達範囲を大きく拡大できる点が特長です。移動時間や費用の関係から会場に足を運ぶことが難しいユーザーにも、手軽な参加機会を提供し、参加者の負担軽減につながります。
また従来の対面型イベントで発生していた会場や印刷物などの物理的なコストを削減し、非常に高い費用効率を実現できるのも特長です。
イベントを運営するチームにおいても移動費、宿泊費を抑えられる可能性があり、ゲストを招くケースでも遠隔でのオンライン参加により、交通費や宿泊費の削減が期待できます。
オンライン配信にはイベント後のデータ収集や分析という側面でも大きなメリットがあります。
オンラインイベントでは事前の登録情報に加え、視聴中の行動ログやアンケートなど、情報を回収する手段が多く、主催者は参加者に関するより詳細なデータの取得・分析が可能となります。
また、オンライン配信ではイベント後のアンケートなどもエンゲージメント率が高い傾向にあり、フィードバックから参加者のニーズを深く分析し、イベント改善に活かすことができるでしょう。
配信の種類と選び方
ビジネスイベントの配信形式は、主にライブ配信、オンデマンド配信(録画配信)、ハイブリッドイベントの3つに分類されます。イベントの目的や求める効果に応じて、それぞれの特徴を理解し、最適な配信方法を選ぶことでイベント配信の恩恵を最大限に得られます。
最も基本的な配信形式が映像や音声をインターネットを通じてリアルタイムで視聴者に届けるライブ配信方式です。
ライブ配信形式は視聴者と同じ瞬間を共有することで臨場感や一体感を生み、チャット機能などを通じた双方向のコミュニケーションを実現できることが最大のメリットです。
視聴者とのインタラクティブな交流を重視したい講演会やウェビナーに向いた配信方式ですが、配信した映像をアーカイブとしてオンデマンド配信に転用することもできます。
オンデマンド配信は事前に録画された動画をアップロードし、視聴者が好きなタイミングでコンテンツを選んで視聴できる配信形式です。
この方式では配信内容の質を高め、高品質な動画を保証できる点が大きなメリットであると同時に、時間や場所の制約を受けず、一時停止や巻き戻しが可能という視聴者の利便性の高さが特徴です。
一度制作すれば会社の資産となり、長期間にわたり活用できるというメリットもあります。教育コンテンツ、研修教材、マニュアル動画など、品質確保や視聴者が自分のペースで知識習得を進めたいコンテンツに適しています。
ハイブリッドイベントは、現地会場で実施する従来方式の対面参加型イベントと、オンラインでのリモート参加を同時に実現する開催方式です。
この方式では対面イベントの臨場感やネットワーキング外部性と、地理的な制約のない利便性や広範囲な集客を両立しており、その柔軟性から参加機会の最大化や、現地開催とオンライン開催によりイベント中止のリスクを抑えられることが特徴です。
ライブ配信同様に交流を重視したい講演会やウェビナー、製品発表会に適した開催形式ですが、全国の支社などを対象とした講習会や社内イベントにも適しています。
失敗しないための事前準備
オンライン配信を活用したビジネスイベントで確かな成果を得るためには、入念な準備と戦略的な運用が欠かせません。
特にハイブリッドイベントを開催する場合には、運営が複雑になる可能性があり、事前の計画と総合的な視点での準備が重要となります。
まず、一般的なビジネスイベント同様に開催目的を明確にし、ターゲット層を絞り込むことが極めて重要です。
新規顧客の獲得など目的とターゲット層が明確に定まっていれば、関心や課題にフィットしたコンテンツやプロモーションなどの設計に繋ぐことができます。
コンテンツにおいては自身の課題を解決できるような実践的な内容や最新トレンドを取り入れることが重要で、魅力的な登壇者の選定も集客力に影響を与えます。
プロモーションではSNSやメールマーケティングを連動させたクロスチャネル戦略や、イベント専用のランディングページを最適化することで集客効果を高められます。
オンライン配信を活用したイベントでは技術的なトラブルも事前に想定しておくことも重要です。
オンライン配信ではインターネット接続の不具合や機材のトラブルにより、映像や音声に問題が発生するリスクがあり、安定した配信のために高品質な配信プラットフォームと安定したインフラを選ぶ 必要があります。
また、トラブルを最小限に抑えるには本番を想定したリハーサルの実施、トラブルを想定した緊急時の対応を定めておくことが効果的です。
ハイブリッドイベントやオンライン配信自体のノウハウがない場合には、配信スキルや経験値のある専門チームに委託することも失敗を防ぐ重要な選択となります。
必要な機材とスタッフ
オンライン配信を成功させるためには、下記のような適切な機材の準備と、各役割を担うスタッフが必要となります。
配信に不可欠な基本機材
- カメラ:オンライン配信にはカメラが必須となります。ハイブリッドイベントなど登壇者や会場の様子を切り替えて映す場合には複数のカメラを用意する必要があります。
- マイク:クリアな音声を届けるために、マイクは非常に重要です。登壇者が複数いる場合は、人数分のマイクが必要となるほか、イベントのスタイルによって有線・無線、ピンマイクなど最適なマイクの種類が異なります。
- 照明: 登壇者の表情を明るく見せるために照明は欠かせません。スタジオなどではリングライトのような照明、大規模な会場であれば備え付けの照明を活用するのが基本となります。
- スイッチャー: 複数のカメラやパソコン画面などを切り替えるための機材です。スイッチャーを操作することで、誰が話しているのかを分かりやすく示したり、プレゼンテーション資料をスムーズに共有できます。
- 安定したインターネット環境: 映像や音声が途切れないように、安定したインターネット回線が必須となります。
- パソコン:会場の映像などをオンライン配信するためにはパソコンと専用の配信ツールが必要となります。
配信を円滑に進めるスタッフの役割
- ディレクター: 配信全体の責任者として、企画から当日の進行管理まで全てを統括します。タイムキーパーや各スタッフへの指示出しなど、その役割は多岐にわたります。
- スイッチャー担当: ディレクターの指示のもと、複数のカメラ映像や資料映像などを切り替える役割を担います。
- カメラマン: 複数の登壇者がいる場合などは発言者をフォローするためにカメラマンが必要となる場合があります。
- 音声担当: マイクの音量バランスを調整したり、BGMを流したりと、音声全般を管理します。視聴者が聞き取りやすいクリアな音声を届けるための重要な役割です。
- 配信管理: 配信プラットフォームの操作や、視聴者からのコメントの監視・対応などを行います。視聴者とのコミュニケーションを円滑にし、イベントを盛り上げます。
配信プラットフォームの比較
オンライン配信を成功させるには、その目的や対象者に合ったプラットフォームを選ぶことが重要です。
プラットフォームにはそれぞれ特徴があり、社内研修のようなクローズドなイベントから、不特定多数に向けたマーケティング目的のイベントまで、用途に応じて最適なツールを使い分ける必要があります。
ミーティングツール:Zoom / Microsoft Teams など
Zoomのようなミーティングツールは主催者と参加者など、参加者同士のコミュニケーションが取りやすいのが特徴です。
画面共有やブレイクアウトルームなどの機能を活用し、研修やディスカッション、顧客とのクローズドなウェビナーなど、参加者を限定した双方向のイベントに適しています。
SNS系ライブ配信機能:YouTube Live / Facebook Live など
YouTube LiveなどのSNSメディアの配信機能は無料で利用でき、不特定多数の視聴者に向けて情報を発信するのに適しています。
YouTubeの場合にはアーカイブとして残すこともできるため、新商品の発表会や企業説明会など、マーケティングや集客を目的としたオープンなイベントに向いています。
専用ツール:V-CUBE セミナー/SmartSTREAM など
より大規模で本格的なウェビナーを開催したい場合や、顧客管理、マーケティング施策との連携を重視する場合には、有料の専用ツールが選択肢となります。
これらのツールは、ウェビナーの開催に特化して開発されており、アンケート機能や顧客管理システムなど、ビジネス活用を強力にサポートする機能が豊富に搭載されています。
配信後のアクション
オンラインイベントの効果を最大限に引き出すためには、イベント後のフォローアップも重要です。
継続的なイベント開催を検討する場合は、参加者からのフィードバックを分析し、イベントの内容や配信環境を改善することで、さらなるビジネスチャンス創出へと繋げることができます。
また、ライブ配信を実施した場合には、その様子を録画しておくことでコンテンツの二次転用が可能です。
録画したものをそのままオンデマンド配信するだけでも、当日参加できなかった欠席者のフォローや、後からイベントの存在を知った見込み顧客の獲得ツールとなる可能性があります。
イベントのハイライトをまとめたダイジェスト動画を作成すれば、イベントの魅力をSNSなどを通じて広範囲に発信でき、企業のブランディングにも繋がります。
オンライン配信を活用したビジネスイベントの事例とトレンド
株式会社ユーグレナ「バーチャルオンリー株主総会」
株式会社ユーグレナは2021年6月の法改正を受け、「場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)」を実施しています。
この取り組みにより、株主は場所にとらわれずオンラインで総会に出席し、ライブ配信を視聴しながらリアルタイムで質問や議決権行使を行いました。
開催後のアンケートでは、出席者の約8割がこの新しい取り組みを「評価する」と答えるなど、株主との新しいコミュニケーションの形を提示しました。
参考:日本初となる「バーチャルオンリー株主総会」を開催、出席株主はライブ配信を視聴しながら質問・議決権行使
日本医学会総会
国内の医学界で最大級の学術集会である日本医学会総会では、オンライン配信や、現地開催とWeb開催を組み合わせたハイブリッド形式が採用されています。
ハイブリッド形式では会場に足を運ぶことが難しい地方や海外の研究者もオンラインで最新の研究成果に触れ、議論に参加することが可能となるため、専門性の高い大規模な学会においても非常に効果的な開催形式であることがわかります。
参考:■NEWS 第31回日本医学会総会が東京で開催―「ビッグデータが拓く未来の医学と医療」メインテーマに
MR技術を活用する最新トレンド
近年のビジネスイベントにおけるオンライン活用は、単なる情報発信の場から、参加者の体験価値を最大化する場へと変化しています。その中心にあるのが、視聴者が積極的に関与できるインタラクティブな要素の導入です。
アンケートやQ&A、チャットといった基本的な機能に加え、視聴者自身がカメラアングルを切り替えられたり、配信画面から直接商品情報にアクセスできたりと、より高いエンゲージメントを生み出すための工夫がさまざまなイベントで確認されています。
こうしたインタラクティブ性をさらに推し進め、より没入感のある体験を提供するために注目を集めているのが、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といったXR技術の活用です。
スマートフォンなどを通して現実の風景にデジタル情報を重ね合わせるAR技術は、新製品を3Dデータで表示して実物大で仮想設置したり、複雑な機械の内部構造を透かして見たりといった、直感的で分かりやすい製品デモンストレーションでの活用が期待されています。
VRゴーグルを装着して仮想空間に没入するVR技術では、遠隔地からの工場見学など自由に動き回ることができる特性を活かした体験や、危険が伴う作業のトレーニングや、大規模な施設のシミュレーションなど、現実では再現が難しい状況を安全かつリアルに体験できるため、研修や教育分野での活用も進んでいます。
こうした仮想空間技術は段階的に導入が進んでおり、2023年には世界3大カスタムカーショーに数えられる東京オートサロンにて、トヨタ自動車とメタバースプラットフォーム「cluster」がタッグを組み、仮想空間上で「TOYOTA GAZOO Racing」と「LEXUS」の車両が一部展示されました。
参考:東京オートサロン2023「バーチャルガレージ by TGR/LEXUS」
まとめ
オンライン配信は集客拡大やデータ活用など、ビジネスイベントに大きなメリットをもたらします。
その成功には明確な目的設定、最適な配信形式の選択、そして入念な事前準備が欠かせません。
配信後のデータ活用まで行うことで効果は最大化され、今後は参加者の「体験価値」をいかに高めるかが、より一層重要となるでしょう。
より良いハイブリッドイベントの企画・実施を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
JCGでは、設計から配信支援、運用改善まで一貫してサポートいたします
リアルとオンラインをうまく繋げることで、より多くの人に「また参加したい」と思ってもらえるイベントを目指しましょう。

