目次
はじめに
なぜ今、eスポーツがZ世代マーケティングでアツいのか?
eスポーツといえば、本記事をご覧になっている皆様はどのようなイメージがあるでしょうか。一般的にゲーム大会をイメージされる方が多いかと思いますが、今や単なるゲーム大会ではありません。 Z世代にとっては、文化であり、友達とつながるための大切な場所、そして巨大なマーケットになっています。多くの企業が「どうすればZ世代に振り向いてもらえるんだろう?」と悩む中、eスポーツは彼らの心をがっちり掴むための最高の舞台として、注目を集めています。
そのポテンシャルは、市場の成長を見れば一目瞭然です。*1 調査会社Newzooのレポートによると、eスポーツの世界市場は2022年に約2,000億円規模に達し、2025年には約2,800億円にまで拡大すると予測されています。
*1 Global Esports & Live Streaming Market Report 2022
この急成長の要因としては、主に3つが挙げられます。スマホで手軽に楽しめるゲームが増えたこと、TwitchやYouTubeでのゲーム配信が盛り上がっていること、そして5Gのような高速通信のおかげで、世界中のどこからでも快適にゲームを楽しめるようになったことです。
日本市場も負けていません。一般社団法人日本eスポーツ連合が発行する*2「日本eスポーツ白書2024」によれば、今後2025年に向けて市場規模は200億円に迫る勢いで拡大すると予測され、急上昇中です。
*2一般社団法人日本eスポーツ連合が発行する「日本eスポーツ白書2024」
しかし、日本のeスポーツ市場で起きているのは、ただの規模拡大ではありません。「eスポーツ2.0」とでも言うべき、大きな変化が起きています。これは、単に試合を配信するだけでなく、ゲームの世界観を軸に、音楽ライブやファッション、アニメなど、様々なエンタメを融合させる新しい動きです。
例えば、国内最大級のイベント『RAGE』では、まるで音楽フェスのように観客がペンライトを振って熱狂します。人気アニメとコラボしたイベントでは、試合の合間に声優が登場してファンを沸かせ、SNSのトレンド1位を獲得しました 。これは、eスポーツが単なる競技観戦の場から、ファンが全身で楽しめる「総合エンターテインメントイベント」へと進化している証拠です。企業にとっては、ただロゴを出すだけでなく、ファンともっと深く、楽しく関われるチャンスが無限に広がっています。
そして、この巨大な文化の中心にいるのがZ世代です。*3 KPMGコンサルティング株式会社の調査によれば、Z世代の約8割がゲームの経験があり、eスポーツの視聴へも関心が高いとの結果が出ています。彼らにとってeスポーツは、ただの暇つぶしではなく、自分を表現したり、仲間と繋がったりするための超重要なツールなのです。
*3【報告書】 令和3年度コンテンツ海外展開促進事業 (Z世代におけるeスポーツおよびゲーム空間に おける広告価値の検証事業)
eスポーツは、もはや無視できない、Z世代攻略のための最重要ルートだということです。しかも、様々なアプローチもできてまさに「今が狙い目」の市場。このチャンスを活かせるかどうかで、未来の顧客を掴めるかが決まります。この記事では、そのための具体的な方法とヒントを、分かりやすく解説していきます。
表1: 世界と日本のeスポーツ市場 ざっくり比較
| ポイント | 世界 | 日本 |
| 市場の大きさ (2023年) | 約2,685億円 | 約100億円 |
| これからの予測 (2025年~) | 約2,800億円に成長 | 2026年に210億円超えと予測 |
| 成長の勢い | 安定して成長中 | 急成長の真っ最中! |
| 盛り上がりの理由 | ・スマホゲーム人気・配信プラットフォームの進化・5G/クラウド技術の発展 | ・「eスポーツ2.0」への進化・音楽やアニメとのコラボ・国や自治体の応援 |
Z世代の「界隈」って何?eスポーツファンのリアルな生態
eスポーツマーケティングを成功させるには、「Z世代」とひとくくりにするだけでは足りません。彼らが作る独特のコミュニティ、通称「界隈(かいわい)」の気持ちやルールを深く理解することが重要です。この章では、Z世代がなぜeスポーツにハマるのか、その心の動きと、「界隈」という不思議なコミュニティの正体、そして彼らのSNSの使い方を分析し、企業がどうコミュニケーションすべきかのヒントを探ります。
一般的な界隈という言葉の意味としては
といった意味がありますが、Z世代では主に そのあたり一帯。付近。近辺。の解釈が近く、SNSを通じて、趣味や価値観でつながったコミュニティを指す場合が多いです。
そういった「界隈」の仲間とゲームを通じた交流がeスポーツに夢中になる理由の1つです。敵を倒してスコアが上がったり、仲間から「ナイス!」と褒められたり。こうした小さな成功体験が、「楽しい!もっとやりたい!」という気持ちにさせます 。
さらに、Discordのようなボイスチャットで仲間と作戦を立てながら戦うことで、「自分もチームの一員だ」という一体感や自己肯定感が生まれます。これは、ただテレビを眺めているのとは全く違う、能動的な体験などが彼らの熱狂の源なのです 。
この熱心なファンたちが集まってできるのが「界隈」です。「界隈」とは、特定のゲームや選手、配信者を中心に、同じ好きを共有する人たちが作る、まるで秘密基地のようなミニコミュニティのこと。そこでは、仲間内でしか通じない専門用語や内輪ネタ(ミーム)が飛び交い、それを使いこなせることが「仲間」の証になります。
企業がこの「界隈」に入っていくには、丁寧さが必要です。なぜなら、「界隈」のファンは、企業からのメッセージが本物かどうかを厳しくチェックしており、商業的な気配を感じると露骨に嫌悪感を表します。もし、ブランドがコミュニティに敬意を払い、ファン目線の面白い企画をすれば、彼らは熱狂的に受け入れ、SNSで勝手に宣伝してくれます。*4日清食品は伝説のネットミーム「電波実況」をモチーフに、プロゲーマー「ウメハラ氏」が出演したカップラーメンチリトマトのCMは大きな話題を呼びました。
*4ウメハラがぁ乗せたぁぁーっ!!!! あの伝説の実況を再現した「カップヌードル チリトマトヌードル」のCMが公開に
※現在CMの動画公開は終了しています。
逆に、ファンの気持ちを無視した一方的な広告は、「空気が読めないヤツ」として、すぐに炎上します。ある海外の飲料メーカーが、大会で自社ロゴを目立たせすぎて「広告ウザい」と大批判を浴びた事件は、その怖さを物語っています。つまり、昔ながらの「企業が言いたいことを言う」マーケティングは通用しません。ファンに喜んでもらえる価値を提供し、「仲間」として認めてもらうこと。それが成功への唯一の道です。
Z世代のSNSの使い方も、「界隈」文化と深く関わっています。彼らは、気分や目的に合わせて、複数のSNSを巧みに使い分けています。
- Twitch: 「今、この瞬間」をみんなで楽しむお祭り会場。試合を見ながらチャットで他のファンとリアルタイムで盛り上がりを共有します。
- YouTube: 大会アーカイブ、スーパープレイ集や、プロによる戦術解説動画を見て、「なるほど、そうだったのか!」知識を深める場所です
- TikTok: 通学中や休憩中などのスキマ時間に、サクッと楽しむショート動画。神業プレイや選手の面白い素顔などを、気軽に楽しむ傾向。
上記にみられるような各SNSの「空気」に合わせたコンテンツ作りが、Z世代の心に響くのです。
表2: Z世代のSNS使い分け早見表
| SNS | どんな時に使う? | 企業のうまい使い方 | 注意点 |
| Twitch | ライブで試合観戦、みんなでワイワイ | 配信者とのコラボ企画、視聴者参加型の投票 | 広告で配信を邪魔しないこと。チャットのノリを理解するのが大事 。 |
| YouTube | 試合の復習、じっくり勉強 | ブランドの裏側を見せるドキュメンタリー、インフルエンサーの商品レビュー | ストーリー性のある、見ごたえのある動画が好まれる 1。 |
| TikTok | スキマ時間にサクッと楽しむ | 面白いショート動画広告、ハッシュタグチャレンジ | 短時間でインパクトを残す!流行りの音楽やネタを使うのがコツ 。 |
| Twitter (X) | 最新情報をチェック、試合を実況 | 速報ツイート、試合中の面白GIF投稿、選手によるQ&A | 情報のスピードが命。ファンとの会話に参加する姿勢が大切 。 |
| Discord | 仲間と深く語り合う秘密基地 | 公式コミュニティ運営、ファン限定の情報公開 | 企業が一方的に宣伝するのはNG。コミュニティの一員として振る舞うこと 。 |
eスポーツマーケティングの成功事例
eスポーツマーケティングの可能性は分かったけど、「で、具体的にどうすれば効果的なの?」というのが本音ですよね。この章では、国内外の成功事例を分析し、そこから見えてくるeスポーツマーケティングの可能性を探ります。スポンサーになってどれだけ効果があったのか、ファンの心を掴む企画の作り方、そしてZ世代に嫌われない広告の秘訣まで、すぐに使える具体的なテクニックを紹介します。
2-1. 国内外の成功事例
eスポーツのスポンサードはZ世代へのリーチにもマッチしており、NTTドコモ、トヨタ自動車、サントリーといった誰もが知る大企業が、eスポーツへの投資で成功しています。
主な事例
- NTTドコモ: 大規模国内eスポーツリーグ“X-MOMENT”を2021年1月から2024年4月まで約3年間運営。初年度だけでTwitch・YouTube合計2.3億インプレッションという、とてつもない宣伝効果を得ました。
- トヨタ自動車: 自社のスポーツカーブランドを活かしたeスポーツイベント「GR e-Motorsport Festival (TGR GT Cup)」を開催し、動画は累計1,200万回も再生されました。
- サントリー: 国内最大級のイベントである「RAGE」や、人気チーム主催の「CR FES」に協賛したほか、過去には日本eスポーツ連合(JeSU)のオフィシャルスポンサーとしても協賛していました。
海外に目を向けると、メルセデス・ベンツが『League of Legends』のパートナーシップ組んでいますが、大会の開催を記念して、実在しない車両新型の「バーチャル・ショーカー」をゲーム上や大会テーマソングMVに登場させて話題となりました。
2-2. UGCとコミュニティのパワー
eスポーツマーケティングの本当の価値は、広告が何回見られたか、だけでは測れません。本当の価値は、ファンとの間に生まれる「共感」と、それが引き起こす「ファンの自発的な応援」にあります。このセクションでは、ファンをただの観客から熱心な宣伝部長へと変える方法、特に「UGC(ファンが作るコンテンツ)」とコミュニティの力を最大限に引き出す秘訣を探ります。
キャンペーンの成功を決めるのはファンが「自分も何か作りたい!投稿したい!」と思えるような仕掛けを作れるかどうかです。では、どうすればファンの参加と共感を促せるのでしょうか?鍵は、観客を「受け身」から「参加者」に変える、インタラクティブな仕掛けにあります。
- 参加型イベントを企画する: 誰でも参加できる「コミュニティ大会」や、ファン投票でゲームのルールを決める企画、ファン投票で夢のチームを作る「オールスター戦」などは、観客をイベントの当事者に変えることが可能です。
- スポンサー連動キャンペーン: ファンの熱量を、直接売上につなげることもできます。エスエス製薬が主催したSTREET FIGHTER 6の大会「SLEEP FIGHTER」では、自社の睡眠改善薬「ドリエル」にちなんだ「睡眠」をテーマに特別ルールを展開し話題になりました。
大会公式サイト:SLEEP FIGHTERⅡ - ファン参加型キャンペーン: 企画の主導権をファンに渡してしまう「共創」モデルです。Riot Games「League of Legends」や「VALORANT」では例年ファンアートを募集しています。とくに「Riot Games ONE FANART CONTEST」では毎年全世界から数多くの募集が集まり、優秀作品はオフラインイベントで展示されるなど一緒にイベントを作り出す一体感が生まれています
これらの施策を成功させるには、ファンとの長期的な信頼関係が不可欠です。特にZ世代の「界隈」では、お金儲けの匂いがするとすぐに嫌われてしまいます。成功しているブランドは、なぜコラボするのかを正直に説明し、ファンの作品を使うときは必ず敬意を払い、ファンからの意見を真摯に受け止めて改善していく、という地道な努力を続けています。これこそが、一瞬のバズで終わらない、本物のファンを増やすための唯一の方法なのです。
まとめ
この記事では、Z世代マーケティングの新しい舞台として、eスポーツが持つ無限の可能性を様々な角度から見てきました。急成長する市場、日本独自の「eスポーツ2.0」という進化、そしてその中心にいるZ世代の熱いコミュニティ「界隈」。これらはもはや、一部の企業だけが注目する特殊な世界ではなく、すべてのブランドが真剣に向き合うべき、現代マーケティングの最重要テーマです。
eスポーツへの挑戦は、未知の世界へのギャンブルではありません。それは、未来の消費の中心となるZ世代と、本質的で長続きする関係を築くための、1つの方法として考えてみませんか。
Z世代向け施策としてeスポーツを取り入れたいと思っているが、何をしたらいいかわからない、費用はどのぐらいかかるのか?など分からない場合是非JCGにお気軽にお問い合わせください。マーケティング領域に感しても経験を元にバックアップいたします。

