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eスポーツの熱狂をビジネスの力に!カスタマージャーニーマップ活用法

ビジネス向け記事

2025.09.11

eスポーツの熱狂をビジネスの力に!カスタマージャーニーマップ活用法

eスポーツ市場の現状とビジネスチャンス

近年、eスポーツ市場は凄まじい速度で成長を続けており、それに伴い多くのビジネスチャンスが生まれています。しかし、この急速な発展は、eスポーツマーケティングに携わる人々にとって新たな課題ももたらしています。

従来の画一的なマーケティング手法では、多様なファン層の複雑なニーズや行動を捉えきれなくなり、効果的な戦略の立案が困難になっています。本記事では、この課題を解決するための強力なツールとして「カスタマージャーニーマップ」の活用法を詳しく解説します。eスポーツファンを深く理解し、彼らの心に響くマーケティング戦略を構築するための具体的な知見を提供します。

日本のeスポーツ市場規模と今後の成長性

日本のeスポーツ市場は、近年目覚ましい成長を遂げています。2022年には市場規模が127.8億円に達し、試合観戦や動画視聴を経験したファン数は1,012万人にも上ると推定されています。この数字は、eスポーツが単なる趣味の領域を超え、一大エンターテインメント産業として確固たる地位を築きつつあることを明確に示しています。

参考: 2022年の国内eスポーツ市場規模が100億円を突破「日本eスポーツ白書2023」の内容を先行公開

eスポーツ市場の成長をさらに加速させる要因として、5G回線の普及が挙げられます。高速かつ大容量の通信環境が整うことで、eスポーツの観戦体験は劇的に進化します。例えば、VR(仮想現実)技術を駆使した没入感のある観戦や、ドローンによるゲーム内のダイナミックな空撮映像のリアルタイム配信など、これまで不可能だった新たな楽しみ方が提供されるようになります。エンターテインメント性に幅が生まれたことで、ファンのエンゲージメントは一層高まり、新規ファンの獲得にも繋がると期待されています。

また、eスポーツは単にオンラインでの観戦に留まらず、特定のリアルイベントでは国内で数万人規模の動員を記録するなど、大きな注目を集めています。大規模な大会やファンミーティングには多くの人々が足を運び、選手とファンが一体となる熱狂的な空間が生まれます。このようなリアルとデジタルの融合は、eスポーツ市場が持つ独自の魅力を際立たせ、今後もさらなる成長を遂げるための大きなポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。

eスポーツの魅力:ファンとの距離の近さが生むビジネスチャンス

eスポーツが他の多くのスポーツと決定的に異なる点のひとつは、選手とファンの距離が非常に近いことです。プロのeスポーツ選手は、日々の練習風景や試合の様子をゲーム配信プラットフォームを通じて公開し、ファンはリアルタイムでコメントやチャットを送ることができます。また、TwitterやInstagramなどのSNSを通じて、選手が積極的に情報発信を行い、ファンのコメントに返信する場面も頻繁に見られます。このような双方向のコミュニケーションが、ファンにとっての親近感や一体感を醸成し、強いコミュニティ意識を生み出しています。

選手とファンの密接な関係は、スポンサーシップ獲得、グッズ販売、イベント参加、動画配信、そして強固なファンコミュニティの形成を通じて、eスポーツにおける多角的なビジネスチャンスを創出し、市場拡大の重要な原動力となります。ファンは単に選手のプレイを見るだけでなく、選手のパーソナリティや人間性にも強く惹かれる傾向があります。そのため、選手のキャラクター性を活かしたグッズ展開や、選手自身がプロデュースするイベントは、適切な企画やプロモーションを行うことで、ファンのエンゲージメントを高め、グッズの売り上げやイベント参加者数の増加に繋がる可能性があります。選手が持つ「人間的魅力」もまた、強力なブランディングや熱量の高いコミュニティ形成に貢献する大切な要素の一つとなるのです。

さらに、地域性がファン獲得の重要な動機となる点も、従来のリアルスポーツと共通する側面です。地元のチームを応援したり、地域に根ざしたイベントに参加したりすることで、ファンはより強い帰属意識を感じます。このようなeスポーツ独自の文化と、ファンとの距離の近さを理解し、活用することで、企業は単なるスポンサーシップに留まらない、より深く、持続的なファンエンゲージメントを築き、新たなマーケティングの機会を創出することができるでしょう。

eスポーツファンを可視化する「カスタマージャーニーマップ」とは?

eスポーツの熱狂的なファンの行動や心理は、従来のマーケティング手法では捉えきれないほど複雑です。彼らは単に試合を観戦するだけでなく、SNSでの情報収集、配信プラットフォームでの交流、オフラインイベントへの参加など、多様なチャネルを横断しながらその「推し」への熱量を高めていきます。このような多岐にわたるファンの体験を深く理解し、効果的なマーケティング戦略を構築するための強力なツールが「カスタマージャーニーマップ」です。

カスタマージャーニーマップとは、特定のチームや選手を認知し、関心を持ち、最終的に熱狂的なサポーターへと変貌するまでの一連のプロセスを視覚的に表現したものです。このマップを活用することで、ファンがどの段階でどのような情報に触れ、どのような感情を抱き、次にどのような行動を起こすのかを詳細に可視化できます。現代のeスポーツマーケティングにおいて、このツールはファンの行動を解き明かし、一人ひとりに最適化された体験を提供するための、非常に有効な羅針盤として機能します。

なぜ今、カスタマージャーニーマップが必要なのか

eスポーツマーケティングの担当者は、「ファンの行動パターンが追跡しづらい」「これまでのマーケティング手法がeスポーツ市場では通用しない」といった課題に直面しているかもしれません。従来の画一的なアプローチでは、多種多様なeスポーツファンの心をつかむことは困難です。ファンは、X(旧Twitter)やTwitchなどのSNS、YouTubeやMildomなどの配信プラットフォーム、さらにリアルなイベント会場といった、非常に多くのチャネルを横断して情報を収集し、選手やコミュニティと交流しています。

このような複雑なファンの行動を整理し、一貫性のあるパーソナライズされた体験を提供するためには、カスタマージャーニーマップが不可欠です。マップを作成することで、ファンがどのタッチポイントでどのような情報を求めているのか、何に喜び、何に不満を感じるのかを明確にできます。これにより、各チャネルでのコミュニケーションを最適化し、ファンのエンゲージメントを効果的に高めるための設計図を描けるのです。

つまり、カスタマージャーニーマップは、単なる分析ツールではなく、ファン一人ひとりの感情や行動に寄り添った、データ駆動型のマーケティング戦略を構築するための基盤となります。顧客理解を深めることで、限られた予算の中でもROI(投資対効果)を最大化し、持続的なファンコミュニティを育成することが可能になります。

eスポーツファンの「ペルソナ」を深掘りする

カスタマージャーニーマップを作成する上で最も重要なステップの一つが、「ペルソナ」の設定です。ペルソナとは、抽象的なターゲット層ではなく、年齢、職業、ライフスタイル、興味・関心、さらには性格や価値観に至るまで、あたかも実在する一人の人間であるかのように詳細に描写された仮想の顧客像を指します。このペルソナを深く掘り下げることで、ファンの行動や感情をより具体的に想像し、彼らのニーズに応えるマーケティング施策を立案できるようになります。

例えば、eスポーツファンの典型的なペルソナとして、「大学生の佐藤さん(21歳、東京都在住)」を考えてみましょう。彼は大学の空き時間や夜に、オンラインゲーム「VALORANT」をプレイするのが日課です。情報収集は主にTwitchでのプロ選手の配信や、Xでの公式アカウントやプロゲーマーの投稿をチェックしています。好きなチームは〇〇eスポーツで、特にチームのエースである△△選手の人間性に惹かれています。彼がeスポーツイベントに参加する動機は、生でプロのプレイを見る興奮と、同じファンと交流できるコミュニティへの帰属意識です。一方で、高額なチケットや遠方への移動は障壁となります。

このように、佐藤さんのような具体的なペルソナを設定することで、「どうすれば佐藤さんがイベントに興味を持つか」「チケット購入の障壁を下げるにはどうすればよいか」といった具体的な問いが生まれます。これにより、SNSで発信するコンテンツの内容、イベントの開催場所や価格設定、さらにはチケット購入サイトのUI/UXに至るまで、よりファンの心に響く施策を検討できるようになります。自社のeスポーツイベントやチームのファン層に合わせて、複数のペルソナを作成し、それぞれのニーズに対応することが成功への鍵となります。

ファンを掴む旅:行動・感情・思考のフェーズを分解する

カスタマージャーニーマップは、ファンが製品やサービスを認知してからロイヤルティを築くまでの過程をいくつかのフェーズに分解し、それぞれの段階でのファンの「行動」「感情」「思考」を詳細に記述していくことで作成します。一般的なフェーズとして「認知」「興味・関心」「検討」「行動(参加・購入)」「ロイヤリティ(共有)」が挙げられますが、eスポーツファン特有の行動パターンに合わせて細分化することも有効です。

例えば、「認知」フェーズでは、ファンはまだ特定のチームや選手を深く知りません。ここでペルソナが取る「行動」は、YouTubeでeスポーツのハイライト動画を偶然見かける、Xで友人がRTしたプロゲーマーの投稿を目にする、といったものです。その際の「思考」は「この選手のプレイすごいな」「eスポーツって面白そう」といった漠然とした興味かもしれません。抱く「感情」は「ワクワクする」「もっと見てみたい」といった好奇心でしょう。この段階では、視覚的に訴求力の高いショート動画や、SNSでの拡散性の高いコンテンツが効果的です。

次に「興味・関心」フェーズでは、ファンはもう少し深く情報を探り始めます。具体的な「行動」としては、その選手の配信をTwitchで視聴する、チームの公式サイトを訪れる、関連するニュース記事を読むなどが考えられます。この時の「思考」は「このチームの戦略はどうなっているんだろう」「この選手のプレイスタイルが好きだな」といった具体的な関心に変わります。「感情」は「共感」「応援したい」といった熱量の高まりを示すでしょう。ここでは、選手の人柄が伝わるインタビュー記事や、チームの裏側を紹介するドキュメンタリーなどがファンの心を引きつけます。

そして「検討・購入」フェーズです。ファンはイベントへの参加やグッズ購入を具体的に検討し始めます。「行動」は、チケット販売サイトをチェックする、グッズのラインナップを比較する、友人にもイベント参加を誘うといったものです。「思考」は「この試合は絶対に見たい」「どの席種がいいかな」「応援グッズを揃えたい」と具体的な判断に移行します。「感情」は「期待」「興奮」といったポジティブなものです。

この段階では、購入を後押しするキャンペーン情報や、スムーズな購入導線が重要になります。

また、イベントに参加した後の「ロイヤリティ(共有)」フェーズも重要です。ファンは体験を友人やSNSで「共有」し、さらにチームへの「貢献」を考え始めます。具体的には、イベントの感想をXに投稿する、ファンコミュニティに参加する、新しいファンにチームの魅力を伝えるといった「行動」が見られます。この時の「思考」は「もっとチームを応援したい」「次のイベントも参加しよう」といった長期的な関係性を望むものです。そして「チームの一員である」という強い「感情」を抱くようになります。

このフェーズでは、ファンコミュニティの運営や限定コンテンツの提供が、ファンのロイヤルティをさらに深める鍵となります。

カスタマージャーニーマップで実現するマーケティング戦略

前章で作成したカスタマージャーニーマップは、単なる分析ツールにとどまりません。これは、eスポーツファンの複雑な行動や心理を深く理解し、それに基づいた具体的なマーケティング戦略を立案するための羅針盤となります。ファンの各フェーズにおける状態やニーズに合わせて、どのようなアプローチが最も有効なのかを体系的に解説することで、より効果的な施策を展開できます。

このセクションでは、コンテンツマーケティングからキャンペーン設計、そしてコミュニティ運営に至るまで、カスタマージャーニーマップを活用した実践的な戦略を具体的にご紹介します。これにより、eスポーツ市場で成功を収めるための具体的な道筋を見つけられることを目指します。

認知フェーズ: ファンとの出会いを生むコンテンツマーケティング

カスタマージャーニーにおける「認知」フェーズは、まだeスポーツファンではない潜在層にアプローチし、興味を持ってもらう最初の重要な段階です。ここでは、まだファンになる前のターゲットに対して、いかにしてeスポーツの魅力を伝え、最初の接点を作り出すかが重要になります。

具体的なコンテンツアイデアとしては、プロ選手のスーパープレイ集や、人気ゲームの初心者向け解説動画が挙げられます。例えば、「Apex Legends」の初心者向けに、キャラクターの選び方や基本的な立ち回りを解説する動画は、ゲームを始めたばかりの層に深く響くでしょう。人気ストリーマーとのコラボレーション配信は、適切な組み合わせと企画によって、ストリーマーの既存ファンをeスポーツの世界に引き込む効果的な手段となりえます。SNSでは、ハッシュタグキャンペーンを展開し、ユーザー参加型の企画で認知度を高めることも有効です。

さらに、5G回線の普及が進む中で、VRを活用した観戦体験や、ドローンによる臨場感あふれる空撮映像は、既存のファンだけでなく、新たな層にもeスポーツの迫力を伝える没入感の高いコンテンツとなります。これらの多様なコンテンツを通じて、eスポーツへの興味の種をまき、ファンとの出会いを生み出すことができます。

検討・購入フェーズ: 購買を後押しするキャンペーンと体験設計

ファンの興味・関心が高まり、eスポーツイベントへの参加や関連グッズの購入を具体的に「検討・購入」するフェーズでは、彼らの購買行動を後押しするための施策が求められます。

効果的な施策としては、期間限定の観戦チケット割引キャンペーンや、SNSでのリポストを条件とした抽選プレゼント企画が挙げられます。特に、期間限定の割引や特別なプレゼントなどのインセンティブは、ファンの「今買いたい」という気持ちを刺激し、購入へのハードルを下げる効果が期待できます。また、リアルイベント会場での限定グッズ販売は、「ここでしか手に入らない」「今しか手に入らない」といった限定性や、イベントのテーマに合わせたオリジナルデザインによって、その場にいるファンだけが手に入れられるという特別感を強く演出します。これにより、参加の記念や思い出となる体験価値を提供し、SNSでの共有を促す話題性も相まって、ファンの購買意欲を強力に刺激します。

さらに、購入体験のシームレスさも非常に重要です。チケット購入サイトのUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)を最適化し、迷うことなくスムーズに購入手続きが完了できるようにすることで、購入途中の離脱を防ぎます。例えば、モバイルフレンドリーなサイト設計や、必要最低限の入力項目に絞ることで、ファンはストレスなく購買行動を完遂できるでしょう。

ロイヤリティフェーズ: ファンを「信者」にするコミュニティとパーソナライズ施策

一度きりの顧客を熱狂的な「信者」へと昇華させる「ロイヤリティ」フェーズでは、ファンとの継続的な関係を構築し、帰属意識や特別感を醸成する施策が重要です。ファンクラブ限定の選手からのメッセージ配信や、オンラインでの選手交流会は、ファンにとって忘れられない体験となり、チームや選手への愛着を深めます。また、Discordなどのコミュニティプラットフォームを活用し、ファン同士が交流できる場を提供することで、共通の趣味を持つ仲間とのつながりが生まれ、より強固なコミュニティが形成されます。

このフェーズで特に力を発揮するのが、データに基づいたパーソナライズされたアプローチです。カスタマーデータプラットフォーム(CDP)を導入することで、ファンの観戦履歴、購入履歴、SNSでの行動、応援している選手などの多様なデータを一元的に集約し、統合されたプロファイルとして活用できます。これにより、例えば特定のゲームタイトルをよく観戦するファンにはそのタイトルの最新情報や関連イベントの告知を、特定の選手を応援しているファンにはその選手の限定コンテンツを優先的に配信するといった、一人ひとりの興味関心に合わせた情報提供が可能になります。

さらに、機械学習の技術を用いることで、集約された顧客データを高速で分析し、類似の属性や行動を持つファンのセグメントをリアルタイムで作成できます。これにより、常に最新の顧客情報に基づいた最適なターゲティングが実現します。例えば、「直近で特定のチームの試合を3回以上視聴しているが、まだグッズ購入がないファン」といった詳細なセグメントに対して、限定グッズの先行販売情報を送るといった施策が可能です。

予測分析も有効な手段です。過去のデータからファンの次の行動を予測し、例えば「そろそろ次の大会のチケットを購入する可能性が高いファン」を特定し、先回りして購入を促すメッセージを送ることができます。このようなデータ駆動型でパーソナライズされたアプローチは、マーケティング活動のROI(投資対効果)や広告のROAS(広告費用対効果)を大幅に改善し、ファンのエンゲージメントを最大化することで、単なる顧客ではなく、ブランドの熱心な「信者」へと育て上げることを可能にします。

成功事例に学ぶ!eスポーツ企業のマーケティング戦略

このセクションでは、これまでご紹介してきた理論や戦略が、実際のeスポーツビジネスの現場でどのように成果を上げているのかを、具体的な成功事例を通して詳しくご説明します。国内外の先進的なeスポーツ企業が、どのようにファンを深く理解し、エンゲージメントを高めているのかを明らかにすることで、読者の皆さんがご自身のマーケティング活動に活かすヒントを見つけられるよう、具体的に見ていきましょう。

カスタマージャーニーを基盤にした国内外の成功事例

カスタマージャーニーの考え方をマーケティング戦略の基盤に据え、大きな成功を収めている事例として、国内のプロeスポーツチーム「ZETA DIVISION」と、海外のeスポーツイベント運営企業「Riot Games」をご紹介します。

まずZETA DIVISIONは、個々の選手のパーソナリティを重視しZETA DIVISIONは、個々の選手のパーソナリティを重視し、ゲームプレイだけでなく、選手たちの日常やチームの舞台裏を積極的にSNSや動画配信で発信しています。これにより、ファンとのエンゲージメントを深め、グッズ販売やイベントのチケット販売といった活動においても、ファンとの良好な関係を築いています。これは、ファンが単に試合結果だけでなく、選手の人間性や成長過程に感情移入し、長期的なロイヤリティを築くというカスタマージャーニーの「ロイヤリティ」フェーズを意識した戦略です。

次にRiot Gamesは、自社ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会「Worlds」において、会場でのイベント、オンライン配信、グッズ販売、ファン交流イベントなど、多岐にわたる側面から体験を設計することで、ファンを熱狂させています。次にRiot Gamesは、自社ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会「Worlds」において、会場でのイベント、オンライン配信、グッズ販売、ファン交流イベントなど、多岐にわたる側面から体験を設計することで、ファンを熱狂させています。

また、「検討・購入」フェーズでは、大会のチケット販売だけでなく、視聴方法の多様化(例えば、複数の言語での配信、共同視聴機能など)を提供し、ファンが自分に合った形で試合を楽しめるよう工夫しています。ささらに、「ロイヤリティ」フェーズでは、ゲーム内アイテムや限定スキンの配布などが行われており、ファンの熱量維持や次回の大会への期待感向上に貢献していると見られます。

これらの施策は、ファンの行動、感情、思考を深く理解し、それぞれのフェーズで最適な体験を提供することで、Worldsのようなイベントにおいて、2023年の決勝戦で640万人以上、2024年の決勝「T1 vs. BLG」では5000万人以上という高い同時視聴者数を記録するなど、大規模な集客と高いエンゲージメントを実現しています。

データドリブンな意思決定と成果

これらの成功事例の裏側には、単なる感覚や経験だけでなく、徹底した「データドリブンな意思決定」があります。例えば、ZETA DIVISIONは、SNS投稿やライブ配信のデータを分析し、次のコンテンツ制作に活かしています。Riot Gamesもまた、膨大な視聴データ、ゲーム内行動データ、SNSでの言及データなどを統合し、ゲーム体験の向上やデータに基づいたコンテンツの提供、不正行為の抑制などに活用しています。また、APIを通じてファンがデータにアクセスし、独自のコンテンツを作成できるような環境を提供しています。

このようなデータ活用の中心にあるのが、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)です。CDPは、様々なチャネルから集められた顧客データを一元的に管理し、継続的に更新される統合されたプロファイルとして活用することを可能にします。これにより、ファンがどのゲームタイトルに興味があり、どのような配信者をフォローしているか、過去にどのようなグッズを購入したかといった詳細な情報をリアルタイムで把握できます。さらに、機械学習を用いることで、類似の属性や行動パターンを持つファンを自動的にセグメント分けし、それぞれのセグメントに最適化された情報やオファーを届けることが可能になります。

予測分析もデータドリブンな意思決定の重要な要素です。例えば、「このファンは過去の行動パターンから見て、次回の大型イベントのチケットを購入する可能性が高い」といった予測を立て、その予測に基づいて、個別にチケット購入を促す通知を送ったり、限定特典を案内したりすることができます。このように、データに基づいてファンの次の行動を予測し、先回りして適切なアプローチをすることで、マーケティング活動のROI(投資対効果)や広告のROAS(広告費用対効果)を大幅に改善することが期待できます。データ活用は、eスポーツマーケティングにおいて、より少ない予算で最大限の成果を出すための鍵となるのです。

まとめ

これまで、eスポーツ市場の持つ大きな可能性と、ファンを深く理解するための強力なツールであるカスタマージャーニーマップ、そしてそれを支えるデータドリブンなアプローチについて解説してきました。本記事で提示したこれらのフレームワークは、マーケティング活動を次のステージへと導き、より効果的な戦略構築に貢献します。

eスポーツとカスタマージャーニーマップの相乗効果

eスポーツは、単なるゲームの競技ではなく、選手とファンが密接に関わり合う熱量の高いコミュニティとして進化しています。この活気ある市場において、カスタマージャーニーマップは、ファン一人ひとりの行動、思考、感情を深く理解し、彼らが体験する「旅」のあらゆる段階で最適なアプローチを提供するための羅針盤となります。マップを通じてファンの視点に立つことで、彼らが何を求め、どのような瞬間に心が動くのかを正確に捉え、パーソナライズされた体験を設計できるようになります。

ファン一人ひとりの旅に寄り添い、質の高い体験を提供することは、短期的な集客効果に留まらず、強固なブランドロイヤリティと持続的なファンコミュニティを築く上で不可欠です。ぜひ本記事で学んだカスタマージャーニーマップの作成とデータドリブンなアプローチを是非実践に導入し、お役に立てると幸いです。


JCGではeスポーツを用いたマーケティングのご相談にも応じております。
些細なことでもかまいませんので、是非お問合せください。

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