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eスポーツを用いたプロモーションは「アリ」か「ナシ」か?費用対効果を徹底検証

ビジネス向け記事

2025.09.12

eスポーツを用いたプロモーションは「アリ」か「ナシ」か?費用対効果を徹底検証

近年、eスポーツは単なる娯楽の枠を超え、世界中で数百万人のファンを熱狂させる巨大なビジネス市場へと変貌を遂げています。多くの企業がこの成長市場に注目し、新たなプロモーションの機会を模索していますが、「本当にeスポーツ広告は費用対効果が見合うのか?」という疑問は尽きません。本記事では、この問いに対し、データと具体的な事例を基に徹底的に検証していきます。

eスポーツ広告の有効性、その具体的な手法、そして効果測定の方法論について詳しく解説することで、企業のマーケティング担当者がeスポーツを活用したプロモーション戦略を立案する上で役立つ情報を提供します。この急成長する市場において、どのようなアプローチが最適なのか、一緒に見ていきましょう。

はじめに:eスポーツは「遊び」から「ビジネス」へ

eスポーツは、単なるゲームからプロリーグや国際大会が開催される一大ビジネスへと変貌しました。この市場の成長を牽引するのは、従来のテレビや新聞ではリーチしにくいZ世代です。彼らはeスポーツコンテンツを通じて、強固なコミュニティを形成しており、企業にとって非常に魅力的な広告媒体となっています。

eスポーツの視聴者やプレイヤーは、「特定のゲームや選手に強い愛着を持つ熱狂的なファン」です。この熱量が企業の商品やサービスに対する自然な関心と高いエンゲージメントを生み出し、従来の広告手法では得られない効果を期待できます。

なぜ、今eスポーツが広告の新しい選択肢なのか?

現代の広告市場では、従来のマス広告が若年層、特にZ世代へのリーチにおいて課題を抱えています。彼らはテレビ離れが進み、スマートフォンの普及とともにオンライン動画視聴やSNS、ライブ配信を主なメディア接触手段としています。このようなメディア消費行動の変化に対応するため、企業は新たな広告チャネルを模索しています。

その中でeスポーツは、若年層やZ世代(10代から30代)へのマーケティングに非常に効果的なツールとして、大きな注目を集めています。eスポーツコンテンツは、彼らの日常に深く浸透しており、大会やチーム、選手の生配信などを通じて、視聴者と強固なコミュニティを形成しています。この熱量の高いコミュニティは、企業にとって非常に魅力的な広告媒体となり得るのです。

eスポーツの視聴者やプレイヤーは、単なる受け身の消費者ではありません。彼らは、特定のゲームタイトルや選手に強い愛着を持ち、その活動を熱心に応援する傾向があります。この「熱狂的なファン」という特性が、企業の商品やサービスに対する自然な関心と高いエンゲージメントを生み出し、広告への高い受容性へとつながるため、eスポーツは現代広告の新しい選択肢として非常に有望視されています。

eスポーツ広告の費用対効果が「高い」3つの理由

eスポーツ広告が企業のマーケティング戦略で有効な理由を、「ターゲットへのリーチ」「広告への高い受容性」「効果測定の透明性」という3つの側面から解説します。

理由1:テレビでは届かない「熱狂的なファン」に直接アプローチ

eスポーツ広告が費用対効果に優れる最大の理由の一つは、その独特なオーディエンス層への強力なアプローチ能力にあります。eスポーツのファンは、主に従来のマス広告ではリーチしにくい10代から30代の若年層、特にデジタルネイティブであるZ世代が中心です。彼らはeスポーツに対して非常に高い熱量と、コミュニティへの強い帰属意識を持っています。

Z世代のメディア接触状況とeスポーツの魅力

Z世代はスマートフォンを情報収集の中心とし、YouTubeやTwitchなどのライブ配信プラットフォームでの視聴が常態化しています。彼らは一方的な情報発信よりも、双方向のコミュニケーションや「推し」への応援を重視します。eスポーツは、この価値観に合致したコンテンツであり、選手やストリーマーへの「推し活」として自然に購買意欲へと結びつきます。

理由2:広告が嫌われない「エンゲージメント」の高さ

eスポーツのファンは、スポンサー企業が選手やチーム、そして大会運営を支える重要な存在であることを理解しています。そのため、広告は「邪魔者」ではなく、「共にeスポーツを盛り上げる仲間」として認識され、企業ブランドへの好意が形成されやすい傾向にあります。

ゲーム内広告と配信者プロモーションの成功事例

引用:人気プロゲーマーチームZETA DIVISIONの公式グッズショップ

高いエンゲージメントが生まれる具体的な広告手法としては、まずゲーム内広告が挙げられます。大会のライブ配信画面にスポンサーロゴが自然に表示されたり、ゲーム内に企業ブランドのスキンやアイテムが登場したりすることで、ファンは違和感なく広告に触れることができます。例えば、大会中に選手が着用するユニフォームや、使用するゲーミングデバイスに企業のロゴが入っているだけでも、ファンにとっては「推しと同じものを使いたい」という購買意欲に直結することが少なくありません。

さらに効果的なのが、人気配信者(ストリーマー)やプロゲーマーとのタイアッププロモーションです。彼らは日頃からファンとの密なコミュニケーションを通じて強い信頼関係を築いています。彼らがライブ配信中に自然な形で特定の商品を紹介したり、使用感を共有したりする「インフルエンサーマーケティング」は、従来の押しつけがましい広告とは異なり、ファンに極めて好意的に受け入れられます。例えば、ある配信者が新しいゲーミングチェアを「これ、本当に長時間座っていても疲れないんですよ」と紹介しただけで、視聴者の間で大きな話題となり、商品の売上へと繋がった事例は多数存在します。このような自然な形での商品レビューや推奨は、ファンにとって単なる広告ではなく、信頼できる情報源からの「おすすめ」として認識され、高いエンゲージメントと購買意欲を引き出す成功パターンと言えます。

理由3:データで効果を「可視化」できる透明性

eスポーツ広告は、デジタル媒体としての特性を活かした「効果測定の透明性」が強みです。視聴者数、エンゲージメント率、ウェブサイトへの流入数、コンバージョン数といった詳細なデータをリアルタイムで把握できます。これにより、投資した費用に対してどのようなリターンが得られたかを客観的に評価し、次の施策に活かすことが可能です。

費用対効果(ROI)の測定方法と改善ポイント

eスポーツ広告における費用対効果(ROI)を測定するためには、まずプロモーションの目的に応じた重要業績評価指標(KPI)を明確に設定することが重要です。例えば、認知度向上を目指すのであれば「リーチ数」「視聴完了率」を、商品購入やリード獲得が目的であれば「ウェブサイトへのクリック数」「コンバージョン数」をKPIとします。

実際の測定では、ライブ配信プラットフォームから提供される視聴データや、キャンペーン専用のURL(UTMパラメータ付き)を経由したウェブサイトへの流入データを分析します。また、ソーシャルメディア上での言及数やエンゲージメント率(リツイート、コメントなど)も、ブランドに対する関心度を測る重要な指標となります。これらのデータを定期的にモニタリングし、設定したKPIに対する達成度を評価します。

さらに、効果を最大化するためにはPDCAサイクルを回すことが不可欠です。視聴データからターゲット層の反応が良いゲームタイトルや、高いエンゲージメントを持つインフルエンサーを見極め、次回のキャンペーンに活かします。例えば、特定の時間帯に視聴者数が伸びる傾向があるならば、その時間に広告露出を増やす、あるいは特定のコンテンツがファンに強く響くのであれば、その要素を次の企画に取り入れるなど、データに基づいた改善を繰り返すことで、広告の費用対効果を継続的に高めていくことができます。

成功事例から見るeスポーツ広告の「勝ちパターン」

これまで、eスポーツ広告が持つ若年層へのリーチ力、高いエンゲージメント、そしてデータに基づいた透明性といった費用対効果の高い側面について解説してきました。ここからは、理論だけではなく、実際に企業がどのようにeスポーツを活用し、どのような成果を上げてきたのかを具体的な成功事例を通して見ていきましょう。企業の規模や目的に応じて異なる「勝ちパターン」を3つご紹介しますので、ご自身のビジネスに合った戦略を見つけるためのヒントとして活用いただければ幸いです。

パターン1:大手企業による認知度向上戦略

「League of Legends World Championships」で「メルセデス・ベンツ」提供されたリング

引用:ライアットゲームズ パートナーの「メルセデス・ベンツ」が2021年の「リーグ・オブ・レジェンド World Championship」王者のためのリングを初披露

eスポーツ広告の「勝ちパターン」の一つは、大手企業による大規模なブランド認知度向上戦略です。自動車メーカーや大手飲料ブランドなど、潤沢な広告予算を持つ企業が、eスポーツの持つ巨大なリーチ力を活用して、特に若年層へのアプローチを強化しています。これらの企業は、国内外の有名eスポーツリーグや人気チームのメインスポンサーとなることで、数百万人に及ぶ熱心な視聴者層に自社ブランドを浸透させています。

例えば、ドイツの高級自動車ブランド「メルセデス・ベンツ」

が人気eスポーツタイトル「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会「League of Legends World Championships」の冠スポンサーとなり、大会中継の画面全体にロゴを表示したり、大会のテーマソングのMV内にこの大会のためにデザインされた車両デザインの車が登場したり、大会商品の自社ブランドの意匠を取り入れたチャンピオンシップリングを提供した事例があります。

これにより、ブランドの先進性や若々しいイメージを効果的に訴求し、これまでリーチしにくかったデジタルネイティブ世代からのブランド認知度と好意度を飛躍的に向上させています。スポンサーシップ契約を通じて、大会の視聴者数やSNSでの言及数、Webサイトへの流入数などを継続的に計測し、ブランドリフト調査と組み合わせることで、投下したリソースに対する明確な成果を評価できる点も、大手企業がeスポーツを選択する大きな理由となっています。

パターン2:中小企業でもできる費用対効果の高い施策

引用:バウヒュッテ公式サイト

限られた予算の中小企業にとって、eスポーツ広告は決して高嶺の花ではありません。数百万円規模の多額な投資が難しくても、戦略的なアプローチでターゲット層へ深くリーチし、高いエンゲージメントを獲得することが可能です。

中小企業の成功事例としては、特定のゲームタイトルに特化した小規模なコミュニティ大会への協賛が挙げられます。

例えば、ゲーミング家具を扱う企業「Bauhutte(バウヒュッテ)」は、地方のeスポーツ大会に自社製品を公式チェアとして提供しています。会場に体験ブースを設けることで、参加者は実際に製品の座り心地を試すことができ、その場で商品への興味関心が高まりました。結果として、大会終了後にはSNSで多くの好意的な感想が拡散され、ECサイトの売上にもつながりました。

このアプローチは、大規模広告では得られない「製品の体験機会の提供」と、ユーザーからの「直接的なフィードバック収集」を可能にし、費用対効果の高いプロモーションを実現しています。

また、影響力は中堅ながらも熱心なファンを持つマイクロインフルエンサー(ストリーマー)の起用も有効な手段です。高額なギャラが必要なトップインフルエンサーではなく、特定のコミュニティ内で高い信頼と影響力を持つマイクロインフルエンサーに自社製品を体験してもらい、その感想をライブ配信やSNSで発信してもらうことで、ターゲット層に響く自然な形で製品の魅力を伝えることができます。これにより、少ない投資で高いコンバージョン率やブランドへのエンゲージメントを得ることに成功した事例が多数存在します。

パターン3:〇〇業界の意外な成功事例

eeスポーツ広告の応用範囲は、ゲームやデバイスといった直接的な関連業界に留まりません。金融、BtoB、不動産など、一見eスポーツとは結びつきが薄いと思われる業界の企業も、その特性を理解し活用することで、プロモーションを成功させています。

金融業界の事例:若年層との「信頼関係」を築く

金融業界では、従来の広告ではリーチしにくい若年層との接点を作る目的でeスポーツを活用しています。

例えば、松井証券きらぼし銀行はプロeスポーツチームのスポンサーとなることで、ゲーマーコミュニティに自社ブランドを浸透させました。また、三井住友銀行はeスポーツ大会の冠スポンサーを務めただけでなく、プロゲーマー向けにお金のセミナーを開催。これは、将来のメイン顧客となる若年層に対し、堅苦しいイメージの金融サービスを身近に感じてもらい、信頼関係を醸成する狙いがあります。

その他の業界事例:コミュニティと未来志向を活用

金融業界以外でも、eスポーツは多様な目的で活用されています。

  • BtoB企業: eスポーツ大会での採用活動を通じて、ITリテラシーの高い若手人材に効果的にアプローチしています。
  • 不動産デベロッパー: ゲーマー向けの住宅やeスポーツ施設を提案し、新しいライフスタイルを求める層のニーズに応えています。

これらの事例は、eスポーツが単なる広告媒体ではなく、ターゲット層の価値観や行動様式を深く理解することで、業種を問わず幅広い企業にとって戦略的なマーケティングツールとなり得ることを示しています。

参考:業界初!松井証券がプロeスポーツチーム「FENNEL」とスポンサー契約を締結
「eBASEBALL プロリーグ」2020シーズン 「e日本シリーズ」に三井住友銀行の協賛が決定

御社の答えは「アリ」か「ナシ」か?

これまでeスポーツを用いたプロモーションの有効性について、様々な角度から検証してきました。若年層やZ世代といった、従来のメディアではリーチしにくい「熱狂的なファン」に直接アプローチできる点、スポンサー企業に対する高いエンゲージメントが期待できる点、そしてデジタルならではのデータに基づいた透明性の高い効果測定が可能である点は、eスポーツ広告の大きな強みです。

記事冒頭の「eスポーツを用いたプロモーションは『アリ』か『ナシ』か?」という問いに対する答えは、明確に「戦略次第で極めて有効な施策(アリ)」であると言えます。単に広告枠を購入するだけでなく、ターゲット層の特性やゲームタイトルの文化を深く理解し、それに合わせたクリエイティブや展開方法を検討することで、投資対効果を最大化できます。

貴社の抱えるマーケティング課題に対し、eスポーツ広告が新たな解決策となり得る可能性は十分にあります。認知度向上、ブランドイメージの確立、特定層へのリーチ、または具体的な商品購入への誘導など、目的に応じた適切な戦略を立てることで、eスポーツは強力なビジネスツールとして機能するでしょう。

まとめ

eスポーツ広告の有効性は高いものの、その実施にあたっては専門的な知識が求められます。eスポーツ業界は急速に成長しており、ゲームタイトルごとのコミュニティの特性、プロ選手の人気度合い、配信プラットフォームのトレンド、さらには業界特有の慣習など、考慮すべき要素が多岐にわたります。これらを自社だけで全て把握し、最適な広告戦略を立案するのは容易ではありません。

そこで推奨されるのが、eスポーツと広告の両方に精通した専門家への相談です。彼らは最新の市場トレンドを把握しているだけでなく、貴社の目的や予算に合わせた最適なゲームタイトルや選手、チーム、イベントの選定、さらには効果測定指標の設定から、キャンペーンの実行、改善提案まで、一貫したサポートを提供できます。

専門家の知見を活用することで、高額な投資をして効果が得られないといった失敗を避け、限られた予算の中でも最大限の費用対効果を引き出すことが可能になります。ぜひ一度、専門家にご相談いただき、貴社のマーケティング戦略にeスポーツをどう組み込むべきか、具体的な一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。


JCGではeスポーツのイベント開催番組制作関するご相談を受け付けております。
eスポーツに絡めたプロモーションのご提案なども可能ですので
一味違った施策を検討したい際にはぜひ一度お気軽にお声がけください。

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